公開日: 2026年5月22日
妊娠中に飛行機へ乗る予定があると、「お腹の赤ちゃんに負担はないかな」と心配になりますよね。
本記事では産婦人科医の立場から、妊娠中の飛行機の利用について、特に医学的に知ってほしい内容をまとめました。
なお、以下の記事もあわせて参考にしてください。
・産婦人科医が伝えたい「妊娠中の旅行」の危険性
・妊婦さんは飛行機に乗っても大丈夫?〜航空機の規則と医療面の安全性から〜
気圧の変化への過度な心配はいりません

旅客機の客室は地上とまったく同じ環境ではなく、標高約1,200〜2,500mに相当する気圧に保たれています。
そのため血液中の酸素がやや薄くなり、酸素飽和度が約10%低下することがあります。妊娠の経過が順調であれば、この変化で赤ちゃんに問題が起こる可能性は低いとされています。ただし重い貧血の方や、心臓や肺に病気がある方は事前に主治医へ相談してください。
また、気圧の変化により耳がつまった感じや痛みが出ることがあります。特に鼻づまりがあるとつらくなりやすいため、つばを飲む、飴をなめるなどで対応するとよいでしょう。
機内は湿度が低く、のどや鼻、口の乾燥を感じやすい環境であるため、水分はこまめにとるのがお勧めです。炭酸飲料は、フライト前や機内では控えめにするとよいでしょう。
搭乗回数が少なければ、放射線は低リスク

飛行機は高いところを飛ぶため、地上より大気の影響を受けにくく、その分だけ宇宙からの放射線の被ばく量は少し増えます。
ただし、一回ごとの被ばく量は少なく、一般的な旅行で利用する程度であれば、赤ちゃんへの影響を心配する必要はないレベルと考えられています。国内線や海外旅行で数回利用するくらいで問題になることは通常ありません。
気圧や乾燥のように体で変化を感じるものではないため、不安になりやすいかもしれませんが、たまに飛行機に乗るくらいであれば過度に心配する必要はありません。
なお、搭乗前のボディスキャナーについては、国土交通省は母子に障害を与える可能性はないと案内しています。
放射線については、まず「頻回利用でなければ心配しすぎなくてよい」と考えてよいでしょう。
妊娠中は血栓症(エコノミークラス症候群)に注意が必要

妊娠中は、妊娠していないときと比べて血液が固まりやすく、そこに飛行機で長時間座ったままの状態が重なると、脚の静脈に血のかたまりができる「血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)」のリスクが高くなります。
特に4時間を超えるフライトでは注意が必要とされています。そのため妊娠中に飛行機を利用する場合には、以下のような予防策を取ることが重要です。
- 通路側の席を選び、できれば1時間ごとに少し歩く
- 座ったままでも、30分おきに足首を動かす
- 水分をこまめにとる
- カフェインの多い飲み物はとりすぎない
- 締めつけの強い服は避け、楽な服装と靴にする
- 必要に応じて、医師と相談して弾性ストッキングを着用する
トイレが心配でも、水分を控えすぎないようにしましょう。また、乱気流などによるケガを避けるため、歩くとき以外はしっかりシートベルトを着用してください。
シートベルトはお腹のふくらみの上ではなく、子宮を避けるようにお腹の下、骨盤の低い位置で締めるのが基本です。
以前に血栓症があった方など、医師からリスクが高いといわれている場合は、追加で対策を取るべきかなどを搭乗前に確認しておくことをお勧めします。
飛行機に乗ること自体が流産や早産などの妊娠のトラブルを直接増やすとは考えられておらず、妊娠経過が問題ない妊婦さんにとって飛行機の利用は基本的には悪影響にはなりません。
しかし、気圧の低下による体調変化や血栓症のリスクの上昇はあるため、飛行機を利用する前には、現在の妊娠経過で搭乗してよいか必ず主治医に相談しましょう。
あわせて、航空会社のサイトで妊娠週数による搭乗条件や診断書の要否を確認しておくと安心です。
<参考文献>
・RCOG: Air travel and pregnancy.
・RCOG Scientific Impact Paper No.1: Air Travel and Pregnancy.
・ACOG Committee Opinion No.746.
・Centers for Disease Control and Prevention. Pregnant Travelers. CDC Yellow Book 2026. Updated Apr 23, 2025.
・国土交通省. 「ご妊娠中のお客様の保安検査について」.
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインでご相談ください。




