産婦人科医が伝えたい「妊娠中の旅行」の危険性

最近では「マタ旅」という言葉もあるほど、妊娠中に旅行することが広まってきているように感じます。しかし、産婦人科医としては妊娠中の旅行は推奨し難いもので、様々なリスクがあると考えています。妊娠中の旅行について、医学的な視点での解説と注意点を説明します。

妊娠中の旅行には多種多様なリスクが

例えば、もともと流早産の徴候があったり、その危険性を指摘された妊婦さんの場合には、肉体的、精神的ストレスによって流早産が悪化することは充分にありえます。また、飛行機や新幹線などの長時間移動では、脱水傾向や安静による血流の悪化から血栓症(血管の中で血の塊ができてしまい血管が詰まるもの、エコノミークラス症候群とも呼ばれます)の発症も懸念されます。さらに、階段からの転倒や交通事故などの「偶然のトラブル」が発生するケースも想定されますが、妊娠中では通常時とは影響の度合いが大きく変わってきます。
これらのトラブルが起きたとき、旅行先では、産科医院に行きたくても、産科医院がなかなか見つからないかもしれません。また、海外では高額な医療費がかかることもあります。

旅行先で救急受診した妊婦の25%が緊急入院に

2014年の沖縄県立中部病院の報告によれば、沖縄本島を旅行中に体調が急変し、現地で救急受診した妊婦さんは過去10年間に少なくとも約300人います。そのうち4割は「安定期」だったようですが、救急受診の結果、74人が入院となりました。このうち11人はそのまま出産したとのことです。出産となったケースの中で、3人は妊娠5~6か月の妊婦で死産、残り8人中7人が早産になりました。

「旅行」と「奇形や流早産」の間の関連

実は、「旅行」と「奇形や流早産」の間には直接的な関連はなさそうとされています。
一昔前までは、旅行による肉体的、精神的ストレスが子宮内の赤ちゃんになんらかの悪影響を与えるのではないかと考えられてきました。例えば、飛行機による高度上空の低酸素や気圧も懸念されていました。しかし、最近の航空機では上空でもほぼ一定の環境に保たれています。
旅行と奇形や流早産の関連性について明らかな証拠は見つかっておらず、旅行と奇形や流早産は、直接的には無関係だろうという考えが現在では主流です。

旅行する場合は主治医や家族とよく相談を

妊娠初期や臨月付近でなければ、旅行が明らかな悪影響を与えるという医学的証拠はありません。そのため、「絶対にダメ」というわけではありません。
しかし、上述の通りリスクが多く存在します。旅行前に異常な徴候がないかを含めて、主治医に必ず確認するようにしてください。特に、産休が取れる34週以降では、早産の確率が高くなる時期ですので、旅行には危険な時期と言えます。

産後は大変そうだから今のうちに旅行をしておきたい、という気持ちはわかります。でも、お腹の赤ちゃんに負担をかけてしまう可能性をわざわざ増やしてまで、妊娠中に旅行に行くべきかどうか、ぜひ考えてみてください。産後に、周囲からのサポートをしっかりもらい、お子さんを預けて旅行する方もいらっしゃいますよ。家族みんなで、より良い案を探していけるといいですね。

さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師にご相談ください。

産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後の不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。

(産婦人科医 重見大介