妊活中の注意点と健康的な体づくり

最終更新日: 2024年12月25日 by 産婦人科オンライン

書いた人

中木 絢子

産婦人科医

健康的な体づくりは、妊娠しやすい体づくりとイコールです。妊活中に気を付けるべき生活習慣と、妊娠のその後も見据えたライフスタイルについてお伝えします。

食生活は栄養のバランスと質に気を配りつつ、葉酸はサプリメントで補充を。生肉の摂取は要注意。

タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルをバランスよく食べ物から摂取するのが基本ですが、これらの栄養素の「質」にも気を配ることで、食事をより健康的なものにすることができます。

例えばタンパク質なら、オメガ3脂肪酸やビタミンDを多く含む魚を積極的に摂ったり、糖質なら、食物繊維やミネラルを同時に摂取できる玄米などのホールグレインを取り入れたり、といった具合です。

また、妊娠前から積極的に葉酸を摂取することで神経管閉鎖障害など先天異常のリスクを減らすことができます。そのため、一日400μg(ただし合計量が1000μg=1mgを超えないように)のサプリメントの内服が積極的に勧められます。

マルチビタミンのサプリメントを摂取される方は、ビタミンAの摂りすぎに注意が必要なので、妊娠中の方・妊娠を目指す方用のものを選ぶと安心です。

サプリメントに関しては「妊娠中のサプリメント 〜選び方のコツと注意点〜」もご参照ください。

注意が必要な食べ物としては、トキソプラズマ感染症のリスクがある生肉が挙げられます。妊娠超初期を含む妊娠中にお母さんが感染することで、胎児に脳症や網脈絡膜炎など重大な影響を及ぼす事があります。妊娠を考えている方は、肉類をよく加熱して食べましょう。

食べ物からお腹の赤ちゃんにうつる感染症(1)トキソプラズマ」で詳しく解説しています。

妊娠希望のご夫婦は禁煙を。飲酒は最小限に。カフェインは一日コーヒー1杯程度までが安心です。

妊娠を希望されるご夫婦は、禁煙を強くお勧めします。喫煙する女性は非喫煙者と比べて不妊率、流産率ともに高くなります。妊娠中・出産後の両親の喫煙も生まれてくる赤ちゃんにとてもリスクのあることばかりです。

詳しくは「妊娠中の喫煙を必ずやめてほしい3つの理由」もご参照ください。

アルコールに関しては、男女ともに、一日2杯以上のアルコール摂取が妊娠率に影響するというデータがあります。妊活中はできるだけ飲酒の機会を減らし、妊娠中は禁酒を。

妊娠中の飲酒が胎児に及ぼす影響については、「妊娠中の飲酒、赤ちゃんにどんな影響があるの?」もご参照ください。

カフェインについては、一日500mg(コーヒー約5杯)以上摂取する女性は不妊率が高くなるというデータがあります。妊娠中も中等量の摂取で流産のリスクが高くなるという研究結果もあるため、たくさんカフェインを摂る習慣のある方は、妊娠前からカフェインの摂取量を減らしていくと良いでしょう。

妊娠中のカフェイン摂取に関しては、「妊娠中や授乳中のカフェイン摂取はだめ?〜摂取量と注意すべきこと〜」も参考にしてください。

一日30分の運動を習慣に。筋力を保って健康的な体づくりを目指しましょう。

痩せ(BMI 18.5未満) も肥満(BMI 30以上)も、不妊の原因になり得ます。運動習慣は筋力を保つだけでなく、慢性炎症を抑え、心血管系疾患や糖尿病などの予防効果がある事も科学的に証明されています。

また、妊娠中に運動習慣のある妊婦さんは、産後の回復にかかる時間が減少することや、妊娠糖尿病や産後うつのリスクが低くなる、というデータもあります。

理想的な最低限の運動は一日合計20-30分以上、ウォーキングやエアロビクスなど、少し息が上がる程度の有酸素運動です。運動習慣を身につけて、健康的な体づくりを目指しましょう。

こちらのジャーナル
妊娠中は適切に運動をして、健康なマタニティライフを!
妊娠中は適切に運動をして、健康なマタニティライフを!(2)ー具体的な運動方法
も参考になさってください。

妊活中の注意点についてお伝えしました。何事もストレスになっては逆効果なので、無理のないものから取り入れてみてください。

妊娠から育児までを支える、健康的な体を目指しましょう。

<参考文献>
ASRM. Optimizing Natural Fertility: A committee Opinion 2022
ACOG FAQ Tobacco, Alcohol, Drugs and Pregnancy
The anti-inflammatory effects of exercise: mechanisms and implications for the prevention and treatment of disease (Gleeson et al. Nature Reviews Immunology 2011, DOI 10.1038/nri3041)
 ACOG Committee Opinion. Physical Activity and Exercise During Pregnancy and the Postpartum Period
・ WHO 身体活動・座位行動ガイドライン


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(産婦人科医 中木 絢子

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