胎児発育不全と診断されたらどうなるの?産婦人科医が解説します

最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン

こちらの記事で、胎児が正常範囲より小さい「胎児発育不全(FGR)」について解説しています。FGRと診断されたあとはどのような治療や管理方針となるのでしょうか。
本記事でわかりやすく説明していきます。

胎児発育不全は確立した治療方法がまだありません

胎児発育不全とは「その週数の正常範囲下限よりも赤ちゃんの推定体重が小さい」ことを意味します。そして、この原因は大きく3種類あり、
(1) 体質的に小さいだけ(もともと何かの疾患ではない)
(2) 妊娠初期からずっと小さいもの(主に染色体等の異常がある場合)
(3) 妊娠途中から発育成長が鈍くなったもの(主に胎児への血流に異常がある場合)
が挙げられます。

そして、これらのほとんどは確立された治療方法がありません。お母さんがたくさんご飯を食べる、水分をたくさんとる、絶対安静にする、なども胎児発育不全への治療効果はないと考えられています。
入院の上で点滴をする場合もありますが、これも大きな治療効果はないとされています。

胎児発育不全の診断後は厳重にチェックを重ねます

胎児発育不全が見つかった場合、上記理由の(2)、(3)では通常よりも厳重なチェックが必要となります。例えば、
・何らかの生まれつきの疾患があると想定された場合には、より安全な出産環境に向けて調整をする(出産する病院を検討し直すなど)
・超音波検査で胎児への血流が悪いことがわかった場合には、胎児が元気かどうか細かなチェックをしていく

などの対策を取る可能性があります。
また、入院してもらうことで、より細かなチェックができるようにする場合もあります。入院期間は数週間、または出産までずっと、となることもあります。

赤ちゃんの状況によっては陣痛が来る前に出産を早めることも

胎児機能不全が見つかった場合、大切なことは「いつまで妊娠を安全に継続できるか」を判断することです。つまり、
・少しずつでも赤ちゃんが成長している(推定体重が増えている)
・元気さが十分ある
ことがどちらも確認できていれば、たとえ小さくてもある程度は妊娠を継続し、少しでも赤ちゃんの成熟度や体重を正常に近づけていくことができます。

しかし、どちらかに異常がある場合は、妊娠を続けることで逆に赤ちゃんが苦しくなってしまうこともあるため、子宮から出して医学的な管理を行う方が安全なこともあります。
非常に小さく、または早産として産まれた場合には、新生児集中治療室(NICU)への入院が必要となることがあります。

今回は胎児発育不全の治療・管理方針について説明しました。読んでいると不安になってしまうかもしれませんが、きちんと担当の先生の説明を聞き、状況を家族みんなで理解し、なるべくベストな方法で赤ちゃんを迎えてあげることが一番大切と言えるでしょう。

*参考文献
Stanford Children’s Health. Fetal Growth Restriction.


さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師・助産師にご相談ください。

産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後の不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。

(産婦人科医 重見大介

SNSでシェア