「胎児が小さい」と言われたらどうなるの?〜胎児発育不全とは

妊娠中は、お腹の赤ちゃんが順調に育っているか気になりますよね。今では超音波検査(エコー)で推定体重が計測できるようになり、成長が実感できますが、時々「平均よりも小さめ」と言われてしまう場合があります。
今回は、胎児の発育と、その異常(胎児発育不全)について解説します。

胎児の体重増加には大まかな「正常範囲」があります

妊娠初期には親指大だった赤ちゃんは、お腹の中でぐんぐんと大きくなっていきます。近年では超音波検査で体重の推定ができるため、大まかな「正常範囲」が定められており、これを大きく外れていないか、定期的に妊婦健診でチェックされます。
例えば週数ごとの正常範囲の目安は以下の通りです。
・妊娠20週:250g〜350g程度
・妊娠30週:1200g〜1700g程度
・妊娠35週:1900g〜2700g程度
・妊娠40週:2500g〜3700g程度
*日本産科婦人科学会周産期委員会の資料を参考に大まかな範囲を記載(これから外れる=異常、とは限りません)

そして、妊娠中の推定体重が正常範囲下限を下回ると、「胎児発育不全(FGR)」が疑われることがあります。

胎児発育不全の診断には、通常数回の体重測定が必要です

胎児発育不全が疑われた場合、まずは何回か超音波検査での測定を繰り返し、本当に小さいか、体重は増えているかを慎重に評価します。これには、
・超音波検査にはどうしても誤差の問題がある(およそ±10%の誤差が出てしまいます)
・赤ちゃんの向きによって体重が正確に計測しにくいときがある
などの理由があります。

そのため、数日または1週間ほど期間を空けて再計測することもあります。
もし、数回の測定でやはり正常範囲下限を下回っている場合には、胎児発育不全と診断されることになります。

胎児発育不全(FGR)では体重以外の異常がないか詳しくチェックします

胎児発育不全と診断された場合は、
・その他の異常がないか
・赤ちゃんが元気そうか
・体重が増加しているか
を検査することも大切です。なぜなら、ただ単に身体が小さいだけでなく、赤ちゃんの臓器や羊水量に異常が見つかったり、子宮内での元気さが十分でないと判明することがあるからです。

なお、胎児発育不全には、単に体質的に小さな(病気ではない)赤ちゃんも含まれていますので、小さい原因をしっかり見極めることが重要といえます。
詳しい治療や管理方針はこちらの記事をご覧ください。

今回は赤ちゃんの発育とその異常について詳しく解説しました。
推定体重の目安や「小さい」の意味を知っておくことで、産科の先生の説明も理解しやすくなるかと思います。
ただ、いつも気にしすぎてストレスを抱えているのは精神的に良くないですので、普段はリラックスして過ごすことも大切ですよ。

*参考文献
日本産科婦人科学会周産期委員会資料.
Stanford Children’s Health. Fetal Growth Restriction.


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(産婦人科医 重見大介

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