子宮内膜症と診断されたら、どんな治療法があるの?

最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン

10代〜40代女性の約1割が患っていると考えられている子宮内膜症。痛みや不妊を引き起こすやっかいな病気ですが、どのような治療法があるのか、わかりやすく紹介します。

治療法①:薬物治療

子宮内膜症への治療法の1つ目は薬物治療です。具体的には、以下のような薬が使われます。どのタイミングでどの薬を使うかは、個別に検討されます。

(1) 痛み止め
月経痛や骨盤痛などの痛みに対し、対症療法として痛み止め(鎮痛薬)が使われます。代表的なものは「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」で、市販薬としても手に入ります。しかし、子宮内膜症の進行を抑える効果はありません。
(2) ホルモン療法
体内のホルモン環境を調整することで、症状の改善や病変の進行を抑える効果が期待できます。低用量ピル(エストロゲン/ プロゲスチン配合剤)や黄体ホルモン製剤(ジェノゲスト)、GnRH アゴニスト(注射剤・点鼻薬)などがあります。
(3) 漢方薬
対症療法として、漢方薬が使用されることもあります。ただし、漢方薬だけで十分な症状改善を得られることは少なく、また病気の進行を抑えることもできませんので、あくまでも補完的治療と考えた方が良いでしょう。

治療法②:手術

主に、薬物治療でも症状が改善しない、病気が進行してしまった、などの場合に手術が検討されます。また、卵巣の腫れ(チョコレート嚢腫と呼ばれます)など明らかな臓器の病変がある場合にも実施されることが多いです。

手術にもいくつかの種類があります。

(1) 子宮や卵巣を残すかどうか
子宮内膜症を根治させるためには、子宮や卵巣を病変ごと全て摘出してしまう方法があります。しかし、まだ閉経まで長期間ある、妊娠を希望している、などの女性では子宮や卵巣を残す方法で手術をします。その場合には、子宮内膜症の病変部分だけを切除したり焼いたりします。子宮や卵巣を残した場合、再発の可能性が低くないため術後も薬物治療を続けることが少なくありません。
(2) 開腹手術か腹腔鏡手術か
最近では、手術の創部(キズ)が小さく済む腹腔鏡手術が増えています。しかし、骨盤内の癒着(ゆちゃく)が強固だったり、以前に手術の経験があって難易度が高いと判断された場合などでは、開腹手術が必要になることもあります。主治医とよく相談しましょう。

もし、根治手術で子宮・卵巣を摘出すると、閉経状態になります。更年期症状のケアや脂質異常症、骨粗鬆症などの予防が重要となります。

治療法は個別に検討されます

では、薬物治療や手術など、治療法はどのように決まるのでしょうか。

これは、患者さんの個々の状況(年齢、症状の種類や強さ、妊娠希望の有無など)を総合的にみて判断されます。このため、ご友人の体験談やインターネット上の情報だけで判断するのではなく、必ず産婦人科を受診して主治医とよく相談してくださいね。

子宮内膜症は、手術により根治させない限り、将来的に再発する頻度が高い疾患です。また、卵巣の腫れ(チョコレート嚢腫)は長い年月を経て稀ながら癌化することもあります。しっかりと治療や経過観察をしていきましょう。

*参考文献
女性の健康推進室. ヘルスケアラボ. 子宮内膜症.
Human+. 若い女性のトラブル②子宮内膜症.


さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師にご相談ください。

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(産婦人科医 重見大介

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