産後の抜け毛は私だけ?〜原因と対処法〜

最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン

出産後の女性に生じる抜け毛は、出産(分娩)後脱毛と呼ばれ、程度に個人差はあるものの、枕についている髪の毛の多さ、シャンプーやブラッシングの際の抜け毛の多さなどで気付くことが多いです。経験したことのない脱毛に不安に感じる方もいるかもしれません。このような脱毛は出産後2~5カ月の間に起こりやすいとされています。

脱毛とホルモンの関係

髪の毛は成長期、中間期、休止期を周期的に繰り返します。これを毛周期と呼びます。妊娠中は、女性ホルモンの影響で、成長期が伸び、休止期の毛包が減るので、脱毛しにくくなります。一方で、産後には女性ホルモンが急激に減少するため多くの毛髪が休止期に入り、一斉に抜ける休止期脱毛になることがあります。

脱毛と関連するものとして「睡眠時間の短縮(5.5時間未満)」「重度の疲労」「長時間の勤務」などの重い身体的負担やストレスが指摘されています。また、「髪の長さがセミロング・ロング」「束ねている」「パーマ」「シャンプーが2日に1回以下」など、頭髪や髪皮への負担や刺激の強さ、頭皮の清潔保持の不備が脱毛に関連していると言われています。

治療は基本的に必要ありません

休止期脱毛であればほとんど一過性と言われています。つまり、産後8カ月ごろまでにほぼ抜け終わり、自然に回復するとされています。

髪の毛が気になって過剰なブラッシングや毛を束ねることがありますが、頭髪や髪皮への負担や刺激の強さが脱毛に関連しているとされているのでやりすぎないようにしましょう。

そのほかに対処方としては
●1~2日に1回髪を洗い、頭髪や頭皮を清潔に保つ
●睡眠時間を確保し、疲労を避ける
●タンパク質などの栄養素を十分に摂取する
●不規則な生活を避け、禁煙に努める
などです。

産後の抜け毛に対して、治療は基本的に必要ありません。

具体的な対応は皮膚科を受診、相談を

どうしても脱毛が治らない場合や以前から脱毛がある場合は、円形脱毛症、脂漏性皮膚炎などの可能性があります。こういった場合は皮膚科を受診される方がいいケースもあります。

出産後の脱毛は生理的なものであることが多いので、自然回復することが多いです。過度に心配をする必要はありませんが、医師に相談をしながら、正常な状態に戻るまでゆっくり経過をみていきましょう。

参考文献
・我部山キヨ子.脱毛ケアのエビデンス:産褥期脱毛.臨床看護. 29(13),2003,1943-51.
・斉藤隆三ほか. 産褥期の脱毛について. 北里医学. 8,1978,260-3.
・玉舎輝彦. “色素,発毛の異常”.女性の症候学.青野敏博ほか編. 東京,中山書店,1998,127-135,(新女性医学大系,4)
・Skelton, JB. Postpartum alopecia. Am. J. Obstet. Gynecol. 94(1),1966,125-9.


さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師、助産師にご相談ください。

産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後、そして女性の健康に関する不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。

(産婦人科医 佐伯 信一朗

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