妊娠中は鼻の粘膜がむくみやすく、花粉症の症状が悪化しやすいです。また、今まで花粉症ではなかった方が妊娠や出産を機に花粉症を発症することもあります。
妊娠中や授乳中はお薬の使用に慎重になると思いますが、花粉症の症状がつらくて仕方がない場合は必ずありますよね。
この記事では、妊娠中・授乳中の花粉症に対する対処法について解説していきます。
薬以外での対処方法:とにかく花粉を避ける!
お薬以外での花粉症の対処法で最も重要なのは、花粉を避けることです。以下に具体的な花粉の避け方をお示しします。
・天気予報サイトなどで、花粉情報を確認しましょう。花粉が多い日には、外出時間を短くしたり、外出を控えることもよいでしょう。
・外出時はマスク、帽子、メガネなどで花粉から身を守るようにしましょう。コンタクトレンズではなく、メガネにすることも重要です。
表面がけばだった、花粉のつきやすい服は避けて、花粉が付着しにくい綿やポリエステルの服を着ることも大切です。
・外出から戻ったら、家に入る前に花粉を払い落とし、手洗いうがいをし、洗顔・入浴で体についた花粉を洗い流しましょう。
・花粉の飛散の多い時は換気を最小限にしましょう。また、ふとんや洗濯物の外干しを避けることも有効です。
・花粉症のシーズンはこまめに家の中(特に窓際)を掃除し、空気清浄機を寝室に置いて24時間作動させます。
その他のお薬以外の対処法としては
・運動することで鼻づまりは少し軽減すると言われています(妊娠中は医師に運動可能か確認をしましょう、産後すぐには無理しないようにしましょう)。
・頭を30度ほど上に傾けた状態で寝ることで、鼻の空気の流れが楽になる方もいらっしゃいます。
妊娠中・授乳中でも安全に使用できるお薬があります
妊娠中・授乳中には、胎児や授乳中の赤ちゃんに影響の出るお薬はあります。しかし、今までに長く使用され、安全と考えられているお薬もあります。お薬を使用しなければ生活に支障の出る方もいます。
以下に、妊娠中と授乳中のいずれも安全と考えられている代表的なお薬の例を記載しますので、使用を検討してみてください(花粉症の薬は妊娠中・授乳中でも安全に使用できるものが多く、この他にも安全な薬剤はいくつもあります)。
内服薬
・ポララミン
・レスタミン
・ジルテック
・ザイザル
・クラリチン
・キプレス
など
点鼻薬・点眼薬
体への吸収が少なく、内服薬より胎児や授乳に影響が出にくいです。花粉症に用いる点鼻薬・点眼薬は安全に使用できるとされています。
妊娠中に免疫療法を始めることはお勧めしません
最近では、花粉症に対してアレルゲン免疫療法(舌下免疫療法、皮下免疫療法)という治療も普及してきています。
しかし、妊娠中にアレルゲン免疫療法を始めることはお勧めされていません。可能性は非常に低いですが、重篤なアレルギー反応が出る可能性があるためです。
もし、免疫療法を行っている最中に妊娠がわかった場合、基本的にはお腹の中の赤ちゃんが奇形になりやすいなどの悪影響はないと考えられています。症状が重い場合には継続するメリットも十分大きいですし、継続するかどうかはかかりつけの医師と相談するようにしましょう。
妊娠中・授乳中の花粉症の対処方法について解説しました。特に薬剤に関しては、かかりつけの医師ともよく相談し、使用を検討されてください。
<参考文献>
・伊藤真也, 村島温子 (編). 薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳 第3版. 南山堂, 2020, 777p.
・日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会 (編). 鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2020年版(改訂第9版). ライフ・サイエンス, 2020, 116p.
・Gupta KK, Anari S. Medical management of rhinitis in pregnancy. Auris Nasus Larynx. 2022 Dec;49(6):905-911.
・Pfaller B, Bendien S, Ditisheim A, Eiwegger T. Management of allergic diseases in pregnancy. Allergy. 2022 Mar;77(3):798-811.
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(産婦人科医 杉村航大)