妊娠中の女性に摂ってほしい適切な栄養素とは?

最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン

妊娠したらまず意識することの一つが、栄養素。これまでの食生活でいいのか、どんな栄養素をとったら赤ちゃんにメリットがあるのか。悩みは尽きないかもしれませんね。
今回は、妊娠中の女性と赤ちゃんの健康に役立つ栄養素についてポイントを解説します。

妊娠前〜妊娠初期に一番重要な栄養素 「葉酸」

近年ではだいぶ有名になってきましたが、妊娠初期で忘れてはいけないのが葉酸です。
妊娠初期にこの葉酸が不足すると、胎児の二分脊椎(神経系の先天異常)のリスクが高まることが分かっています。このため、妊娠中には通常に比べて約2倍量の摂取(0.4mg/日)が推奨されています(日本の産婦人科ガイドライン)。

葉酸はビタミンB群の一種で、レバーや緑黄色野菜、果物、海藻などに多く含まれます。食事から摂取することもできますが、必要量を十分に摂取するにはサプリメント(葉酸のみ含むもの)の利用が便利です。

なお、
・葉酸摂取量は1日あたり1mgを超えるべきではない
・一部の薬(抗てんかん薬など)は葉酸の成分を阻害してしまう可能性がある
・二分脊椎のお子さんを出産した経験のある女性では推奨摂取量が異なる
なども重要なポイントです。

「ちょうどいい量」が必要なビタミンAとビタミンD

ビタミンAは、目や粘膜の正常な機能を保ったり、免疫力を高めてくれる作用があります。ただし、摂りすぎてしまうと逆効果で、胎児への悪影響が出てしまうリスクがあることがわかっています。
通常の食生活でビタミンAの過剰摂取となることはまずありませんが、葉酸サプリにビタミンAが含まれていると、知らずに過剰摂取となってしまう可能性があります。服用するサプリメントにビタミンAが含まれていないか、確認してみましょう。

ビタミンDは、骨や歯を健康に保ち、正常な筋肉の動きを支える作用があります。
妊娠中にビタミンDがあまりに不足すると、胎児の発育に悪影響が出てしまうことが報告されています。きのこ類や魚介類、卵黄、バターなどに多く含まれていますが、サプリメントを上手に活用して摂取するといいでしょう。
なお、ビタミンDは多少の過剰摂取による胎児への悪影響は起きにくいと考えられています。

たんぱく質は、出産が近づくにつれて必要摂取量が増える

三大栄養素のうち、炭水化物と脂質には日本人にとっての推奨摂取量が定められていません。
一方、たんぱく質の1日推奨量は妊娠初期に50g、中期に60g、後期に75gと徐々に増えていきます。

偏った食生活ではなく、バランスの良い食事を摂るように心がけていれば、三大栄養素が極度に不足することはあまりありません。
妊娠前と同様に、健康的な食生活を維持できるよう工夫してみましょう。

今回は妊娠中の大事な栄養素として、葉酸、ビタミンA・D、たんぱく質について解説しました。
妊娠初期からお腹の赤ちゃんに影響する可能性のある栄養素のバランス。ぜひ、食生活の工夫やサプリメントの正しい活用により、健康的な妊娠生活を送ってくださいね。

なお、妊娠悪阻(つわり)中の栄養に関してはこちらをご参照ください。

*参考文献
ACOG FAQ. Reducing Risks of Birth Defects.
ACOG FAQ. Nutrition During Pregnancy.
厚生労働省資料.


さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師・助産師にご相談ください。

産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後の不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。

(産婦人科医 重見大介

SNSでシェア