常位胎盤早期剥離の症状と治療

妊娠中に起こる可能性がある合併症は数多くありますが、その中でもお母さんと赤ちゃんの両方にとって非常に危険なものとして、常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)という疾患があります。この疾患は、産まれた赤ちゃんの後遺症にも大きく影響します。発症してから病院へ到着し、対応するまでの時間が1分でも早いほど、母児へのリスクを減らすことができると考えられています。
症状などをきちんと知っておき、いざという時に対応できるよう、詳しく解説します。

主な症状は6つ

主な症状とその特徴は以下の通りです。
1. 下腹部の急激な腹痛
2. 頻回の軽い下腹部痛
3. 持続的な下腹部痛
4. 性器出血(多量のこともあるが、少量か全くないこともある)
5. 動悸、めまい、気分不快などの貧血症状
6. 胎動の減少や消失

なお、上記の全てが同時に起きるとは限りません。
常位胎盤早期剥離は突然起こり、急に状態が悪化するケースが多い疾患です。胎盤が剥がれてしまうことで、子宮内での出血が起きると、子宮がそれに反応して急激な収縮を起こします。ただし、出血が子宮の中で留まり、外まで出てこない場合もあるため、出血がないことが安心材料にはなりません。

子宮内に出血がたくさん出てしまうと、お母さんは貧血の状態となり、ひどい場合にはショック状態(意識がもうろうとしたり、血圧が低下したりする危険な状態)となることもあります。
一般的に、胎盤が剥がれる部分の面積が大きいほど、重症となります。

なるべく早く病院を受診することが何よりも大切

胎盤が剥がれてしまうと、中で出血がおきたり、赤ちゃんへの酸素が届かなくなっていきます。こうなると、赤ちゃんにとっては急速に苦しい状態になりますし、お母さんにとっても気づかないうちに重症の貧血になってしまう恐れがあります。

このため、何よりも大事なことは、「変だな、怪しいな、と思ったらすぐにかかりつけの病院へ連絡する」ことです。
上記の症状や特徴を知っておけば、病院への連絡や受診が遅れてしまう可能性を減らせるかもしれません。

治療は重症度と妊娠時期によってケースバイケース

対応方法や治療は、「重症度と妊娠時期」によって個別に判断されますが、多くの場合には即座に出産(主に緊急帝王切開)が必要となります。

まだ未熟児の時期では、出産となることで赤ちゃんへの負担(未熟児としての健康リスク)が心配されますが、すぐに子宮から出してあげないと、胎盤が剥がれることによる子宮内死亡などのリスクが高まってしまうためです。

また、常位胎盤早期剥離で帝王切開を受けた妊婦さんは、出血が多くなりやすいなどの注意点があります。通常よりも入院期間が延びたり、点滴による治療や輸血が行われる可能性もありますので、主治医の先生に術後の状況をきちんと聞いておきましょう。

今回は、妊娠中に起こる合併症の中で最も怖い疾患の一つである常位胎盤早期剥離について解説しました。読んでいて不安な気持ちが強まってしまったかもしれませんね。でも、実際に起きる確率は全分娩の0.5~1%とそれほど高くはありません。
また、ここで書いた内容を知っておけば、いざという時に症状を我慢せず病院に連絡することができ、1分でも早い対応がなされれば、救える赤ちゃんが増えると信じています。ぜひ、頭の隅っこに置いておいてくださいね。

常位胎盤早期剥離の基本的な解説や頻度、リスクについてはこちらの記事をご覧ください。
妊娠後期の怖い合併症:常位胎盤早期剥離って?


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(産婦人科医 重見大介