最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン
「流産」と聞くと、ドキっとしてしまいますが、「切迫流産」は正しい知識を持っておくことで、過度に不安となることなく対処できます。産婦人科医の立場から、妊娠中の方には是非知っておいてもらいたい内容をまとめました。
切迫流産は「流産のリスクが通常より高い状態」
「流産」とついていますが、「切迫流産」はまだ妊娠が継続している状態で、流産が決定したわけではありません。切迫流産の主な症状は性器出血で、出血量が多く腹痛を伴うほど、流産に進行する可能性が高いと考えられています。一般的に少量の茶色〜黒っぽい出血だけで腹痛がなければ、完全に流産となる危険性は低めと考えられますが、赤く、普段の生理の量くらいの出血が継続したり、強い腹痛を伴う場合には、流産となる危険性が高めと考えられます。ただし、切迫流産全体では、90-95%程度が正常の妊娠に戻ると言われています。
確実に有効な治療法はわかっていない
切迫流産と診断された場合は「無理な運動や身体の負担を避ける」以外に効果的と言える方法はありません。
現在までで世界的にわかってきている主な見解は以下の3つです。
1)唯一できることは安静を意識すること。過剰な運動(テニスなど運動量が激しいスポーツや、重量物の運搬など)は避けるべきですが、日常生活や通常の家事程度の動きではまず悪影響はないだろう。
2)薬剤で確実に有効と判明しているものはない(切迫流産の治癒率を上げたり、流産の発症率を下げると証明されたものはない)。
3)初期の出血に対応する治療法が確立していないので、流産となるかはある程度確率の問題となってしまう。
つまり、「無理な運動や身体の負担を避ける」以外に、科学的に証明された治療法は現在のところありません。これらの内容は、日本の産科診療で広く用いられている「産婦人科診療ガイドライン」にも記載されています。
具体的な対応は担当医に相談・確認を
具体的にどこまで「安静」にすることが必要かつ適切なのかなど、個人個人に合わせた詳細な対応に関しては、各担当医にきちんと確認することが大切です。過度に心配をする必要はありませんが、医師に相談をしながら、正常の妊娠状態に戻るまで適切な対処をしていきましょう。
切迫流産には、精神的なストレスも悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。適切な知識を持つことで、過度に不安を抱えることなく、上手に対処していきましょう。
*参考文献
・一般の方へ. 流産・切迫流産(日本産科婦人科学会)
・出産に際して知っておきたいこと. 妊娠初期の出血について. (国立成育医療研究センター)
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師にご相談ください。
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(産婦人科医 重見大介)