出生前診断を考えるときに必ずわかっていてほしいこと(1)

近年、出産前に胎児の異常があるかどうかを検査する「出生前診断」が普及しつつあります。ところが、検査についての適切な知識やきちんとした準備を持たずに、安易に出生前診断を行うことには多くの危険があります。
特に、非認可の悪質な医療機関等では、手軽さや年齢制限をしないことなどを売りにして、充分な説明もなく検査を行なっている場合さえあります。そのような施設で中途半端な結果を伝えられ、結果的に心も身体も深く傷ついてしまう方々が後を絶ちません。今回は、出生前診断を検討するときに、必ずわかっておいて欲しいことについて解説します。

生まれつきの異常(先天性疾患)は3〜5%の頻度で発生します

前提として、大小含めて、生まれた時点で何らかの疾患を持っている赤ちゃんは3〜5%いると考えられています。これを聞いて、多いと感じるでしょうか?少ないと思うでしょうか?
人の細胞の中にはそれぞれ遺伝情報を持った染色体が存在します。この染色体に異常(過不足や変異)があることが原因で起きる、代表的な先天性疾患がダウン症候群(21トリソミ―)です。染色体異常は先天性疾患の原因の4分の1程度を占めます。
染色体異常による先天性疾患には、他に18トリソミー、13トリソミーなどがあります。実際には、染色体異常による先天性疾患のうち8割程度がダウン症候群(21トリソミー)です。

何よりも大事なのは、まず遺伝カウンセリングです

遺伝カウンセリングとは、出生前検査に関する説明と、ご夫婦(原則、ご夫婦揃っての参加が病院より求められます)の思い、不安などを含めた相談を行うものです。
説明の内容は、胎児が疾患を持っている可能性、検査を行う意義、検査法の診断能力の限界、母体・胎児に対する危険性、合併症、検査結果判明後の対応などについてです。訓練を受けた遺伝専門職によって行われ、国も遺伝カウンセリングを受けることをとても強く勧めています。
この遺伝カウンセリングを通して、パートナーとの考え方に食い違いがないか、異常が見つかった場合にどうするかなど、きちんとお互いの考えを整理しましょう。そして、検査を受ける場合にも受けない場合にも、それを受け入れる気持ちの覚悟を持つことがとても大切です。

日本では主に3種類の検査法があり、それぞれに異なる特徴があります

*ただし医療機関ごとに異なる可能性があるため必ず事前確認をしてください

出生前診断とは、妊娠中の胎児が何らかの疾患を持っているかどうか、検査をして診断することです。もともとの目的は、あらかじめ出生前に生まれつきの異常を診断しておくことで、「生まれた赤ちゃんがその瞬間から、より育ちやすい環境の準備を進めるため」に行われるものです。

出生前診断には、超音波検査などの画像を用いる方法と遺伝学的検査があります。そして、胎児の遺伝学的検査は、胎児に負担のある検査(侵襲的検査)と負担のない検査(非侵襲的検査)に分けられます。
1)画像検査(主に超音波検査)
2)遺伝学的検査 
i) 侵襲なし(母体採血など)
ii) 侵襲あり(羊水検査など)

確定的検査では、流産などのリスクが避けられない

胎児の染色体異常の可能性を評価する検査は、「診断を確定させるための検査かどうか」で大きく2種類に分けられます。

【非確定的検査】
母児への負担はほとんどありませんが、この検査だけでは疾患があるかどうか確定できない検査です。
Aの超音波検査(NT)では、胎児の首の後ろのむくみ(NT)などを測定して、異常の可能性を評価します。
Bの遺伝学的検査(侵襲なし)のうちの母体血マーカー検査(クアトロ検査など))では、お母さんの血液中の蛋白質濃度などを測定し、統計学的にその可能性を評価します。また、Bの遺伝学的検査(侵襲なし)のうちの、母体血胎児染色体検査(NIPT)は、非確定的検査に分類されますが、非確定的検査の中では最も高精度な検査です。

【確定的検査】
非確定検査で異常がある可能性が通常より高いと判断された場合に、診断を確定させるために行うものです。C遺伝学的検査(侵襲あり)の絨毛染色体検査や羊水染色体検査が該当します。ただし、この方法は母児への負担(破水や出血、流産のリスク)が避けられません。

今回は、近年急速に広まりつつある出生前診断について詳しく説明しました。
正確な知識をもとに、学会や国から推奨された手順を踏んで検査を進めていくことが何よりも重要です。また、最初からパートナーと一緒に考えていくことも大切になります。かけがえのない新しい命をどのように迎えていくか、考えてみましょうね。

*参考文献
NIPTコンソーシアム ウェブサイト


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(産婦人科医 重見大介