出生前診断を考えるときに必ずわかっていてほしいこと(2)−母体血胎児染色体検査(NIPT)について

近年、出産前に胎児の異常があるかどうかを検査する「出生前診断」が普及しつつあります。ところが、検査についての適切な知識やきちんとした準備を持たずに、安易に出生前診断を行うことには多くの危険があります。
特に、非認可の悪質な医療機関等では、手軽さや年齢制限をしないことなどを売りにして、充分な説明もなく検査を行なっている場合さえあります。そのような施設で中途半端な結果を伝えられ、結果的に心も身体も深く傷ついてしまう方々が後を絶ちません。今回は、出生前診断を検討するときに、必ずわかっておいて欲しいことについて解説します。

母体血胎児染色体検査(NIPT)について

新型出生前診断法として近年注目を集めている検査法です。母体血から検査する方法で、日本では2013年4月から導入されました。これまでの検査とNIPTの決定的な違いは「採血という非常に負担の少ない検査で、胎児の染色体検査が100%にかなり近い精度で行える」という点です。
日本では、日本産科婦人科学会の指針により臨床研究として認定された施設でしか行えません(2018年3月現在)。
この検査は、染色体異常を「診断」するものではなくあくまでもその可能性を「検出」するもので、この検査で検出できるのは、21トリソミ―(ダウン症候群)、18トリソミー症候群、そして13トリソミー症候群の3つだけです。つまり、全ての染色体異常が検出できる検査ではなく、染色体異常症全体の2/3程度が対象になります。
NIPTの陽性的中率(検査が陽性となった妊婦さんが実際に染色体異常の児を妊娠している確率)は若い女性ほど低くなり、35歳で84%、30歳で68%となります。つまり、30歳でこの検査を受けたとしても、あまり正確なことがわからない可能性があるのです。一方で、陰性的中率(結果が陰性の場合に実際に染色体異常の児を妊娠していない確率)はどの年齢においても高く99.9%以上です。つまり、結果が陰性の場合は21トリソミ―(ダウン症候群)など染色体異常の児を妊娠している心配は100%に近い確率で否定されるため、羊水検査という侵襲的検査を受けないという選択が可能になるメリットがあります。
以上をまとめると、「NIPTは、羊水検査など侵襲的検査を受ける妊婦さんの数を減らすために利用できる検査」であり、これは諸外国でも同様の考えです。

NIPTを受けられる施設

2018年7月13日現在、全国92施設で実施されています。中心的に取り組む共同研究組織であるNIPTコンソーシアムのウェブサイトから実施施設が参照できます。
なお、2018年1月に、日本産科婦人科学会は、NIPTの本格的な実施への移行を検討すると発表しました。つまり臨床研究という形を無くし、受診できる施設を大幅に増やし、対象とする疾患や妊婦の年齢要件の緩和(対象年齢の引き下げ)も段階的に検討されることが予想されます。
また、NIPTコンソーシアムのウェブサイトでは、より詳しい出生前検査の比較表が確認できます。

今回は、近年急速に広まりつつある出生前診断について詳しく説明しました。
正確な知識をもとに、学会や国から推奨された手順を踏んで検査を進めていくことが何よりも重要です。また、最初からパートナーと一緒に考えていくことも大切になります。かけがえのない新しい命をどのように迎えていくか、考えてみましょうね。


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(産婦人科医 重見大介