大切な予定の前など、月経が重なるのを避けられたらいいな、と思うことはありませんか?
月経移動について、産婦人科医の立場からみなさんに知っておいていただきたい内容をまとめました。
月経周期は性ホルモン薬を使用して調節が可能

仕事や旅行、試験などの社会的な理由や、女性アスリートの練習・試合のためのコンディショニング、他の疾患の治療のため性器出血を防ぐという医学的な理由など、様々な場面で月経周期のコントロールが必要となることがあります。
月経のタイミングは性ホルモン薬を使用して安全に移動させることが可能です。
月経移動に使用する薬剤には、中用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬 (EP配合薬)、経口避妊薬 (OC) 、ノルエチステロンの3種類があります。EP配合薬と比べて、OCやノルエチステロンでは不正出血の頻度が多くなりますが、気持ち悪さなどの副作用は少ないとされています。
月経移動には2つの方法がある

月経移動では受診のタイミングや状況に応じて、
①月経周期を早める
②月経周期を遅らせる
の2つの方法を考えることができます。
一般的に、次回の月経を遅らせる方が成功率が高いので、そちらを選択することが多いです。ただ、どちらが適切かは普段の月経周期などによっても異なりますので、診察を担当する医師にご相談ください。
月経移動を希望される場合は、次回の月経予定日やイベントの1週間前までに受診しましょう。日程に余裕を持ってご相談されることをお勧めいたします。
また、性ホルモン薬を正しく服用しても月経移動の成功率は100%ではないことにも注意してください。
すでにOCや低用量ピル(LEP)を使用している方の場合は、その休薬期間を変更することによっても月経のコントロールが可能ですので、ご希望の方は処方を受けている医療機関にご確認ください。
なお、月経移動だけを目的として性ホルモン薬の処方を受ける場合、原則自費診療の扱いとなります。
妊娠の可能性には注意が必要

月経を早める方法では排卵を抑制できない場合があること、月経を遅らせる方法では排卵後の処方になることから、常に妊娠の可能性を念頭に置く必要があります。
妊娠を避けたい方は、月経移動のためにピルを内服している場合でも、他の避妊方法を併用することが必要です。
月経移動を試みた後に月経が来ず、妊娠が疑われる場合は必ず産婦人科を受診してください。
お手元に十分なお薬がある方は、産婦人科オンラインを利用してご相談いただくことも可能です。
<参考文献>
・産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編.2023.p.114-115.
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの助産師にご相談ください。
産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後の不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。
(産婦人科医 草壁 広大)