最終更新日: 2024年3月27日 by 産婦人科オンライン
子宮頸がんは40歳までの若い世代でかかりやすいがんです。病気の進行具合にも幅があり、がんになる前の状態(子宮頸部高度異形成や上皮内がん)から早期がん(頸部に留まる)、そしてリンパ節や子宮の周りの臓器に広がる状態までさまざまです。見つかった状態によって治療方法は大きく異なります。治療による体への負担も大きく変わります。
早期に見つかれば子宮摘出を避けることも可能
治療の大原則は、病気の元である「子宮自体を摘出すること」になりますが、以下の状態の場合には摘出を避けることも可能です。
①がんになる前の状態(子宮頸部高度異形成や上皮内がん)で見つかった場合:
円錐切除術という子宮の頸部(出口)だけを大きくて数cm程度切除する方法が一般的です。手術による体の負担は非常に少ないですが、これから妊娠を考える場合は、妊娠した場合の早産のリスクが数倍に高まると言われています。治療は日帰り~2泊くらいまでが一般的です。仕事には内容にもよりますが比較的早期に復帰できます。
②子宮頸部に留まっている状態で見つかった場合(いわゆるステージ1A程度):
肉眼的にははっきりわからず、顕微鏡で確認できる早期の状態がステージ1Aです。この状態であれば原則的には子宮全摘を行います。リンパ節は摘出の必要はありません。今後妊娠を希望される場合には円錐切除を行うこともあります。
がんが進んでいる場合には2通りの治療法があります
がんが進んだ状態とは、ステージ1Bとよばれる肉眼的にもわかる程度の大きさになっている場合や、ステージ2や3のように子宮の周りの臓器(腟やリンパ節など)に広がっている場合です。
この場合には、大きく分けて
・手術(広汎子宮全摘術という子宮と周りの組織やリンパ節を広く摘出する方法)
・同時化学放射線療法(1か月半から2か月間の放射線治療に加え毎週1回の抗がん剤治療を行う方法)
の2つがあります。
※ステージ1Bでがんが2㎝以下の小さい場合、今後妊娠を希望する方では、子宮頸部だけを摘出し、子宮を妊娠が可能な状態に残す方法もあります(広汎子宮頸部摘出術:トラケレクトミー)。
治療の後遺症について知っておきましょう
がんが進んだ状態で見つかった場合は治療自体が体に大きな負担を与えることになり、以下のような後遺症が問題となります。
手術に特徴的なもの:リンパ浮腫や排尿障害
抗がん剤と放射線治療:免疫力低下、膀胱炎、下痢
手術・抗がん剤・放射線治療に共通のもの:更年期症状、性機能障害など
要精密検査の結果が返ってきても、まずは焦らず自身の状態がどのあたりになるかを精密検査できちんと判断してもらいましょう。
子宮頸がんの治療は進行具合により負担も大きく変わります。治療が必要になってしまった場合はどのような負担が起こり、それに対してどのような対策ができるかをきちんと理解しましょう。
※子宮頸がんは、16歳までの子宮頸がんワクチンと20歳からの2年に一度の子宮頸がん検診の二本柱でほとんど予防することが可能です。
<参考文献>
日本産科婦人科学会. 子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために.
国立がん研究センターがん情報サービス. 子宮頸がんについて.
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師にご相談ください。
産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後、そして女性の健康に関する不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。
(医師 鈴木 幸雄)