「恥骨が痛い…」産後、誰にでも起こりうる恥骨痛 〜その原因と対処法〜

最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン

妊娠中から産後まで、肩こりや腰痛、手首など関節痛のお悩みをご相談される方が多いですが、なかでも恥骨痛を感じる方が一定数いらっしゃいます。特に産後は、日常生活に支障をきたすほどの激痛を感じる方もいらっしゃるようです。今回はそんな恥骨痛がなぜ起こるのか、いつ起こるのか、どう対応したらいいのかなど、原因と対処法についてお伝えしていきます。

恥骨痛はなぜ起こる?妊娠中〜産後の骨盤の変化に注目!

恥骨(ちこつ)とは、骨盤の前側(お腹側)にある骨で、体幹を支える大切な骨盤の一部です。おへその真下で左右の恥骨が接する部分は、恥骨結合と呼ばれます。

妊娠すると、だんだん大きくなる赤ちゃんを支えるために、恥骨結合を含めた骨盤の骨と骨の間が少しずつ広がります。こういった骨と骨の間は靭帯(じんたい)などで形成されているので、引き延ばされると痛みを感じることがあります。

特に経腟分娩の場合、分娩時は狭い骨盤を赤ちゃんが通るので、恥骨結合の距離が伸び、痛みを強く感じることがあります。多くの場合、分娩直後の痛みは出産から3日ほど続きますが、その後は自然と改善し、恥骨結合の距離も産後1ヶ月ほどで元に戻ることが多いようです。

恥骨結合離開は、誰にでも起こる可能性があります!

分娩直後の恥骨結合は普段の倍以上開いているとも言われます。特に、激しい痛みを伴う恥骨結合離開(ちこつけつごうりかい)は、頻度は高くありませんが、全ての産婦さんに起こる可能性があります。恥骨結合の距離が広がりすぎると、歩行や階段の昇り降りが難しいことはもちろん、寝返りをうてないほどの耐えがたい痛みを感じることもあります。

恥骨痛が強い場合は、鎮痛剤を使用し、安静を保って痛みが軽減するのを待ちましょう

産後に恥骨痛を感じている場合の基本的な対処法は、安静と鎮痛剤の内服です。恥骨結合離開の診断の有無に関わらず、同じ対処方法で問題ありません。できるだけ安静を保ち、鎮痛剤で痛みをコントロールしながら、恥骨痛が落ち着くのを待ちます。

ポイントは、いかに安静に過ごせる環境を整えるかというところです。安静というのは、できる限りベッドや布団で横になって過ごすことです。入院中であれば、恥骨痛があることを医師や助産師、看護師などに伝えることで、お子さんのケアやご自身の清潔ケア、着替え、トイレまでの車椅子介助など、必要に応じてサポートを受けることができます。骨盤ベルトやコルセットで固定するのも一案です。

退院後も恥骨痛が続くようであれば、そのようなサポートを家族に担ってもらえるような調整が必要になるでしょう。もし家族の都合がつかない場合は、費用はかかってしまいますが自治体のファミリーサポートやベビーシッター、産後の宿泊や日帰りステイなどの産後ケア事業を活用する方法もあります。

産後ケア事業についてはこちらの記事も参考になさってください。
・産後ケア事業ってなに?どんな人が使うもの? 〜産後の過ごし方について考えてみよう〜

万が一、退院後もひどい痛みが続いたり、鎮痛剤を内服しても効かないような場合には、出産した産婦人科や、近隣の整形外科で相談してみましょう。

産後は誰しも、恥骨痛を抱える可能性があります。産後の安静と鎮痛剤の内服で入院中に軽減することが多いですが、もしも日常生活に支障をきたすような場合には、入院中だけでなく退院後も引き続き身の回りのケアが受けられるよう調整が必要になってきます。何が起こるかわからない分娩だからこそ、妊娠中から「こうなった時はあそこを利用しよう」と準備を進めておけると安心ですね。

参考文献
Becker I, Woodley SJ, Stringer MD. The adult human pubic symphysis: a systematic review. J Anat. 2010;217(5):475-487.
Sung, JH., Kang, M., Lim, SJ. et al. A case–control study of clinical characteristics and risk factors of symptomatic postpartum pubic symphysis diastasis. Sci Rep 11, 3289 (2021).
・マザーヘルス協会、産後リハビリテーション研究会監修、産前産後の母に関わる医療従事者のための 入門ブック Ver1

さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの助産師にご相談ください。

産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後の不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。

(助産師 中村早希

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