なかなか気づきにくい卵巣がんの特徴と最新の治療

最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン

卵巣がんは卵巣にできる悪性腫瘍です。お腹の中で徐々に大きくなりますが、他の多くのがんと違い、かなり大きくなるまで気付きにくい病気です。卵巣がんになりやすい人は、定期検診を受けることで早く気付くことも可能です。是非卵巣がんについて正しく知って頂きたいと思います。

卵巣がんは進行して大きくなるまで気付きにくいです

卵巣がんは決して多い病気ではありませんが、日本では年間約13,000人がかかる病気です。乳がんは約9万人ですからこれに比べると多くはないですが、毎年1万人以上がかかると考えれば珍しい病気ではありません。

卵巣はお腹の中にあり、周りのスペースが広いため、病気が進行して大きくなっても他の臓器への影響がでにくく、自覚症状が現れにくいという特徴があります。
小さいうちに見つけること、つまり定期的な検診によって予防することはなかなか難しいのが現状です。卵巣は月単位で大きくなる(=ペースが早い)ことも予防を難しくする理由の一つです。卵巣がんの半数以上は、ステージ3や4といったかなり進んだ状態で見つかります。その段階では腹水がたまったり、他の臓器に転移が見つかったりします。

検査と診断については、腟からの超音波検査やCT検査などで、お腹の中に腫瘤や腹水の存在がある場合に疑われます。卵巣がんの場合、検査目的に手術を行い、卵巣や腹膜などの病変部から一部を摘出することで、がんの存在を病理学的に(顕微鏡検査で)確認し、確定診断となります。

*ステージは病気の進行度のことで、1〜4まであり、4が最も進んだ状態です。

たくさんの治療を組み合わせることが一般的です(集学的治療)

卵巣がんが、お腹の中の他の臓器(子宮、大網、腹膜、大腸など)に広がっていることも珍しくないため、体に負担のかかる治療が多くなります。早期に見つかった場合でも、卵巣や子宮だけでなく周りのリンパ節や他の臓器(大網と呼ばれる脂肪組織や大腸など)を切除しなければならないこともあります。

また、手術だけでなく、化学療法を駆使して治癒を目指します。特に最近では、いわゆる抗がん剤だけでなく、がん細胞が増えようとする性質を妨げるような仕組みの「分子標的治療薬」と呼ばれる種類の薬も組み合わせて使用されること(集学的治療)が増えてきています。
例えば、血管新生阻害薬というタイプのものや、PARP(パープ)阻害薬と呼ばれる薬(がん細胞を細胞死に誘導する)などです。これらを抗がん剤と一緒に使うことで、高い治療効果を見込める時代となっています。

卵巣がんを発症しやすい人とは?

子宮内膜症をお持ちの方や、乳がんの既往のある方は、卵巣がんを発症しやすいことが分かっています。そのため、場合によっては専門的な定期検診によって早期に見つけることも可能です。子宮内膜症の中でもチョコレート嚢腫といって、卵巣が腫れている状態の方はきちんとした定期的な検診を受けて下さい。

また、乳がんや卵巣がん、前立腺がん、膵臓がんなどが血縁の中に複数名以上いらっしゃる場合は、「遺伝性乳癌卵巣癌症候群」と呼ばれるがん家系である可能性もありますので、病院で早めに相談してみることをお勧めします。

卵巣がんは、進行した状態で見つかる事が多い病気ではありますが、治療はまさに日進月歩で、1年よりも短い単位で最善の治療の方法も変わってきています。そして卵巣がんは、進んだ状態でも根治が目指せることが珍しくありません。

*参考文献
・国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(全国がん登録)2017年.
・産婦人科研修の必修知識2016-2018. 日本産科婦人科学会.


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(医師 鈴木 幸雄

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