子宮頸がんはワクチンと検診でほとんど予防可能な病気です

最終更新日: 2024年3月22日 by 産婦人科オンライン

主にウイルス感染が原因で起こる子宮頸がん。年々患者数が増えており、若い人に起きやすい病気です。子宮頸がんについて正しく理解し、ワクチンと検診でしっかり予防しましょう。

子宮頸がんのほとんどはウイルス感染が原因です

子宮頸がんは子宮の入り口付近(子宮頸部)にできるがんであり、子宮体がんとは原因も特徴も異なります。子宮体がんは40代後半から徐々に患者数が増加するのに対し、子宮頸がんは25-44歳でピークを迎える、若い世代に発生しやすいがんで、日本では近年増加傾向となっています。

また、性交渉によってヒトパピローマウイルス(HPV)が子宮頸部に感染することがほとんどの原因と判明しています。つまり、過去に一度でも性交渉を経験したことがある女性であれば、誰でも発症する可能性があります。さらに、性交渉の経験のある20代女性の間では、HPVに感染している割合は約2割程度と言われており、決して珍しいウイルスではない考えられています。

ウイルスに感染したら9割は自然軽快、1割は進行して異形成となります

では、一度HPV感染が起きた場合にはどうなるのでしょうか?一般的には、一度感染したとしても、約9割のケースでは自然にウイルスが排除される(自然軽快)ことがわかっています。

一方、残りの1割は、「異形成」という子宮頸がんの一歩手前の状態(前がん病変)に数年間かけて移ります。異形成はさらに軽度〜高度まで3段階に区分されています。これらの状態でも自然軽快することが多いですが、高度異形成まで進むと約30%が子宮頸がんに移行すると考えられています。
そのため、高度異形成まで進んだ場合は子宮頸部の一部だけを切り取る手術(円錐切除術)を行うことが一般的です。

通常、HPV感染が起きてから子宮頸がんになるまでは数年〜十数年かかるため、後述する定期検診をしっかり受診していれば多くの場合で早期発見できると言われています。

子宮頸がんを防ぐためには、ワクチン接種と定期検診が重要です

子宮頸がんを防ぐ有効な手段はあるのでしょうか?
現時点で有効な手段は、「HPVワクチン」と「子宮頸がん検診」の2つです。

HPVワクチンに関しては、HPV感染を防ぐ有効性が国内外で科学的に示されており、異形成や子宮頸がんを抑制する効果があると確認されています。日本では、12~16歳の女の子には無料で定期接種が可能です(これ以外の年齢では自費となります)。
これに対し、一部では副反応を不安視する声がありますが、国際的に安全性も確認されているため、安心して接種できます。
なお、副反応についてはこちらの記事も参考にされてください。

一方で、ワクチンを打ったとしても100%の子宮頸がんを防げるわけではないので、2年に1回の子宮頸がん検診が勧められています。日本では定期検診としてお住まいの自治体から費用補助が出ますので、必ず受けるようにしましょう。

ワクチンも検診もどちらも100%の予防法ではありませんが、組み合わせることで子宮頸がんの発症率を大幅に下げることが可能です。両方とも行い、子宮頸がんをなるべく予防しましょう。

*参考文献
日本産科婦人科学会「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」
HPV information center.


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(医師 赤羽宏基

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