最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン
ヘルペスはありふれた病気ですが、妊娠中に痛みを伴う小さな水ぶくれや赤いポツポツが性器の周辺にできると、妊娠や赤ちゃんへの影響について不安になりますよね。性器ヘルペスはお産の際に赤ちゃんに感染するリスクがありますが、正しい知識を持って治療を受けることで、過度に不安になることなく過ごすことができます。
産婦人科医の立場から、妊娠中の性器ヘルペスについて是非知っておいてもらいたい内容をまとめました。
性器ヘルペスってどんな病気?:妊娠中はお産の際の赤ちゃんへの感染が問題
性器ヘルペスは「ヘルペスウイルス」というウイルスが感染し小さな水ぶくれや赤いポツポツ、潰瘍などを作る感染症です。感染部位は口唇と性器が代表的ですが、胸や肛門などにもできる場合があります。最近は特に、口唇にヘルペスの症状がある場合にオーラルセックスをすることで、相手の性器に感染する事例が増えています。
妊娠中の赤ちゃんは、卵膜によって外界と隔たれた状態のため、通常感染リスクはありません。しかし、お産の際に、赤ちゃんの通り道である産道にヘルペス病変があると、赤ちゃんに感染してしまい、時に赤ちゃんに重篤な症状を引き起こすことがあります。
妊娠中のヘルペスはお産の時までにしっかりと治療しておくことが重要です。
性器ヘルペスの症状:性器に発疹ができたら要注意
初めてヘルペスに感染した場合、70%の場合は症状がないか軽度であることが知られています。症状がある場合、初めは外陰部の表面にヒリヒリ感やむずかゆさなどを感じます。
その後、2〜10日ぐらいで強い痛みを伴いながら1〜2mmの水ぶくれや赤いポツポツがたくさん出現します。この水ぶくれが破れると潰瘍(ただれたようなもの)ができます。強い痛みで排尿や歩くことが困難となると、入院が必要となることがあります。
性器に発疹ができた段階で受診するようにしましょう。
また、再発しやすいというのも特徴です。
妊娠中は免疫力が低下した状態のため、ここに過労・ストレスなどの刺激が加わることで再発しやすく、性器またはおしりや太ももに水疱や潰瘍ができます。ただ、症状は軽いことが多く、治るまで期間も短くなります。
性器ヘルペスの検査と治療、お産への影響:お産までにしっかりとヘルペスを治癒させましょう!
性器ヘルペスの検査は、病変部分からウイルス感染細胞を綿棒で採取することにより行い、15分程度で結果がでます(プライムチェックHSV®)。
治療は、単純ヘルペスに対する抗ウイルス薬のうち、赤ちゃんへの影響がこれまで報告されていないアシクロビルによる薬物療法が中心です。症状や病変の程度に応じて内服薬、塗り薬、注射剤が選択されます。
妊娠初期、中期、後期で以下のような治療が行われます。
・妊娠初期
→アシクロビル軟膏を病変に塗布し治療します。また、再度の感染を抑えるため性交渉を控えることが重要です。
・妊娠中期、後期
→内服薬ないし注射剤により治療を行います。
また、赤ちゃんへの感染を防ぐため、以下のような場合にはお産の方法として帝王切開が必要となります。
・お産のために入院した際に、ヘルペス病変を認める、あるいは強く疑われた場合
・初めての感染による発症から1ヶ月以内にお産になる可能性が高い場合
・再発または2度目以降の感染による発症から1週間以内にお産になる可能性が高い場合
ヘルペスの病変の状態や帝王切開が必要かどうかは、しっかりと診察をした上で判断されるので、担当医によく相談するようにしてください。
*参考文献
・日本感染症会誌 性器ヘルペス 2008:19(1) 62-66.
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師、助産師にご相談ください。
産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後、そして女性の健康に関する不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。
(医師 植田 彰彦)