最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン
皆さんは、更年期はいつからどのように始まるかご存知でしょうか?更年期とは、閉経をはさんだ前後5年間の約10年間のことをいいます。この約10年間の間に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が著しく変化するため、様々な身体的・精神的な症状が現れます。では、どのように変化が現れてくるのでしょうか?
閉経前後に女性ホルモンが低下することで全身に影響します
卵巣の活動が加齢に伴って次第に弱まり、生理がこない状態が1年間続いた時に、1年前を振り返って「閉経した」と判断されます。個人差はありますが、日本の平均閉経年齢は約50歳と言われています。
生理は元々、脳の指令と卵巣の反応による相互作用で定期的に起こっています。しかし、卵巣の老化が始まると卵巣から女性ホルモンを十分に出せなくなり、脳と共同で築いてきたホルモンバランスが崩れてしまいます。それにより、生理が不規則になり、最終的に生理が止まります(=閉経)。
また、女性ホルモンは、生理や妊娠に深く関わる以外に、脳・血管・骨・関節・泌尿器・皮膚粘膜・コレステロール代謝などに影響します。閉経後もエストロゲン減少の影響は持続するため、閉経前後の数年間にわたって様々な身体の変化が生じるのです。
更年期に現れる症状は大きく分けて3種類
更年期の症状は、大きく分類すると以下の①自律神経失調症状、②精神的症状、③その他、に分けられます。
① 自律神経失調症状:のぼせ・発汗・ホットフラッシュ・動悸・頭痛・めまい・肩こりなど
② 精神的症状:情緒不安定・イライラ・抑うつ気分
③ その他:
運動器症状(腰痛・筋肉痛・関節痛・手のこわばり・むくみ・しびれなど)
消化器症状(吐き気・食欲不振・腹痛・便秘・下痢など)
皮膚粘膜症状(乾燥・湿疹・かゆみなど)
泌尿生殖器症状(排尿障害・頻尿・性交痛・外陰部のかゆみ・腟乾燥感など)
また、女性ホルモンの減少によって、症状に現れなくとも骨粗鬆症・動脈硬化・コレステロール異常のリスクが高まります。
症状の起こる頻度としては、肩こり、疲れやすさ、のぼせ、腰痛、発汗の順に多く、半数以上の女性は肩こりを自覚するというデータがあります。
一般的な症状の現れ方としては、まず自律神経失調症状を自覚し、その後精神的症状が現れ、徐々にその他の症状が進行すると言われていますが、個人差がとても大きいため症状をほとんど感じない人もいます。しかし、日常生活に支障が出るほど症状が重い場合を「更年期障害」と呼び、一部の女性では医学的なサポートが必要になります。
更年期症状が辛い場合は産婦人科医に相談を
更年期障害が起こる主な要因として、
① ホルモンの変化
② 家庭や社会などの環境的要因
③ 性格・ストレスの受け止め方など心理的要因
の3つが挙げられます。
よって、対応の仕方は人それぞれ異なります。更年期症状が軽い場合には、ストレスを最小限にして過ごしやすいように環境を整える、バランスの良い食事や軽い運動を心がけるなどで乗り切れる場合もあります。一方で、症状が重い場合には漢方薬やホルモン補充療法、抗うつ薬などの医学的サポートを検討します。
また、更年期障害と思い込んでいても別の病気が隠れていることが稀にあるため、更年期症状で悩んでいたら、近くの産婦人科でぜひ相談してみましょう。
更年期症状はなかなか周りに相談しにくいことも多いと思いますが、医学的な対処法が有効な場合も少なくありません。気になる方は、ぜひお近くの産婦人科や、産婦人科オンラインで相談してみてくださいね。
*参考文献
・ACOG FAQ. The Menopause Years.
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師にご相談ください。
産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後、そして女性の健康に関する不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。
(産婦人科医 尾市 有里)