最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン
陣痛促進剤が必要な状況には、さまざまな理由があります。「なるべく自然なお産をしたい」と多くの人が思っていると思います。ただ、なかには母体の体調などで分娩を早める必要が出てくることがあります。
インターネットには様々な情報が載っており、その真偽を判断することは簡単ではありません。ここでは、陣痛促進剤に関して産婦人科医が考えていることをご紹介します。
妊娠高血圧症候群など早めの分娩が必要な状況があります
妊娠中は大きなお腹をかかえ、女性の体には大きな負担がかかっています。そのため妊娠が原因で血圧が高くなったり、妊娠糖尿病になることがあります。特に妊娠中の高血圧では、早めの分娩が必要になることがあります。
また、何らかの理由で、子宮内の赤ちゃんの体重が増えなくなってしまった場合にも、早めの分娩が必要になります。
予定日を過ぎたときの陣痛促進剤についての研究で分かっていること
妊娠中に特に困った症状が全くなくても、陣痛促進剤が必要になることがあります。それは予定日を過ぎても陣痛が来ない場合です。予定日を過ぎたときに、いつから促進剤を使用したほうがいいのかについて、世界中でさまざまな研究がおこなわれています。
妊娠42週以降は、胎盤の血流低下によって赤ちゃんがしんどくなるリスクが高くなります。そのため、妊娠42週台からは促進剤などを使用し分娩誘発することが共通見解として勧められています。海外の研究では、妊娠41週台から誘発分娩を始めた方が、最終的に帝王切開となる確率が下がるという報告もあり、医師によっては妊娠41週台から分娩誘発を提案することもあります。
アメリカからの2019年の報告では、妊娠39週以降であれば、分娩誘発をおこなっても、赤ちゃんへの悪影響は少なく、帝王切開率が少なくなるというものもあります。
ベストな分娩誘発のタイミングは未だに解明されておらず、現在でも研究が続けられているのです。
陣痛促進剤のリスクと注意点
陣痛促進剤は子宮の収縮を強める作用があるため、適切に使用しないと合併症のリスクがあります。子宮の収縮が強くなりすぎた場合、赤ちゃんが苦しくなったり、過度な使用は子宮の筋肉にダメージを与えるリスクがあります。
そのため国内の診療ガイドラインでは、陣痛促進剤の使い方について厳格な決まりを作っています。また、陣痛促進剤を使うときには事前に患者さんに説明を行い同意を得ることが必須となっています。
陣痛促進剤を使う際には医師からしっかりと説明をうけ、不安な点などがあれば質問をしてみましょう。
分娩誘発については、こちらの記事でも解説していますので参考にしてくださいね。
*参考文献
・Elective induction of labor at 39 weeks compared with expectant management: a meta-analysis of cohort studies. Am J Obstet Gynecol. 2019 Oct;221(4):304-310.
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師、助産師にご相談ください。
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(医師 柴田綾子)