公開日: 2025年10月20日
2023年10月に東京都が助成を開始し、話題となった「卵子凍結」。気になっている方も多いのではないでしょうか?
産婦人科医の立場から、是非知っておいてもらいたい内容をまとめました。
卵子凍結は将来の妊娠への選択肢のひとつ

卵子凍結とは、将来の妊娠に備えて、若いうちに質の良い卵子を採取し、凍結保存する方法です。
メリットとしては以下のものがあげられます。
・加齢による卵子の質の低下を防ぐことができる
・ライフプランに合わせて妊娠や出産の時期を調整する一助になる
・妊娠に影響を与える病気(卵巣や子宮の病気、がんなど)にかかる前に卵子を確保することで、妊娠率を上げることができる
卵子凍結の限界:将来の妊娠を保証するものではない

卵子凍結をすれば必ず妊娠できるというわけではありません。
妊娠に至るには
・凍結卵子を溶かす(融解)する
・精子と体外受精させ、良好な受精卵(胚)を作る
・胚を移植し、その胚が着床する
というステップが必要です。
妊娠しても流産してしまう可能性もあり、最終的な卵子1個当たりの出生率は約5〜10%とも言われています。このような理由から、一人の子を産むには10〜20個の卵子が必要と考えられています。
また、年齢上昇とともに妊娠中の合併症のリスクも増加します。年齢の上昇に伴うリスクを十分に理解した上で、卵子凍結および体外受精のタイミングを決めることが重要です。
経済的、身体的な負担もある

さらに、費用や通院、採卵に伴う投薬や処置といった、経済的・身体的な負担もあります。
卵子凍結は全額自費診療になります。凍結保存するまでに30〜50万円、凍結卵子を使用して胚移植するまでに30〜60万円程度が必要になることがあります。
また採卵前には、頻回の通院や排卵誘発剤の注射が必要です。採卵時には感染症や出血のリスクもあるので、注意が必要です。稀ですが、排卵誘発により、腎不全や血栓症をおこすOHSS(卵巣過剰刺激症候群)を発症する可能性もあります。
自分のライフプランを見つめなおし、将来に備えよう

卵子凍結を行った後に妊娠した人の半数以上は、凍結卵子を使わずに、妊娠を計画したときの自身の卵子によって妊娠したという報告もあります。
卵子凍結は将来の選択肢を増やすという点でメリットがありますが、行う際にはデメリットも正しく理解し、自分のライフプランを見つめ直して計画することが大切です。
<参考文献>
・日本産科婦人科学会.ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ.2023.
・東京都 福祉局子供・子育て支援部家庭支援課. 未来につながる選択肢 みんなで一緒に知りたい 卵子凍結のこと. 2024.
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインでご相談ください。