妊娠がわかったら、次に気になるのは「赤ちゃんがいつ生まれるか」ですよね。
赤ちゃんがいつ生まれるかの予測日を「分娩予定日」と呼びますが、その決定方法にはいくつかの方法があります。
当記事ではその具体的な決定方法を解説していきます。
分娩予定日には、様々な決め方があります
分娩予定日は受精日(卵子と精子が出会った日)を妊娠2週0日として、妊娠40週0日ちょうどに決定します。
●人工授精・体外受精の場合は受精日から計算を行います。
人工授精や体外受精といった不妊治療により妊娠した場合には、受精日がはっきりしていますから、分娩予定日が決定できます。人工授精であれば治療を行った日を妊娠2週0日として計算し、体外受精であれば受精後の培養日数をもとに計算を行います(胚盤胞移植では移植の5日前を受精日=妊娠2週0日として計算します)。
●タイミング法・基礎体温がわかる場合は、排卵日から計算を行います
不妊治療のタイミング法の情報や基礎体温の情報があり排卵日がよくわかる場合には、その情報から排卵日を推定し、その日を妊娠2週0日として計算を行います。
●自然妊娠では最終月経と超音波所見から計算を行います。
自然妊娠では受精日、排卵日がわからないことも多いです。なので最終月経の日を妊娠0週0日として分娩予定日を計算する方法と、超音波で赤ちゃんの大きさ(頭からおしりまでの大きさや、頭の横幅の大きさ)から計算する方法があり、総合的に判断を行います。
自然妊娠の場合はやや複雑なので、詳しく解説していきます。
自然妊娠では超音波検査後に分娩予定日を修正することがよくあります
自然妊娠の場合には、分娩予定日の決定方法はやや複雑になります。
●最終月経から計算した分娩予定日は、正確でないことも多いです。
最終月経の日を妊娠0週0日として、分娩予定日の計算を行う方法は、月経周期が28日周期で、なおかつ月経不順がないことが前提となっています。月経不順がもともとある場合や、順調であっても排卵がずれる場合があり、約半数が正しく分娩予定日を設定できていない、という報告もあります。
●超音波からの計算はとても正確であるといわれています。
妊娠の初期の段階では、赤ちゃんの成長はあまり個人差がありません。そのため赤ちゃんのサイズを計測することで、妊娠週数を予想することができます。超音波での計測は赤ちゃんの頭からお尻までの長さ(CRL:胎児頭殿長)を計測し、計測値から週数が計算できます(超音波装置に計算式が入っています)。このCRLが20mm~30mm(妊娠週数だと9週~10週前半)の時の計測が特に誤差が少ないとされています。
●最終月経と超音波所見をもとに分娩予定日を決めます。
自然妊娠で妊娠がわかった場合には、ひとまず最終月経から計算した「仮の分娩予定日」を設定し、その後妊娠10週ごろに超音波計測を行い、総合的に考え「分娩予定日の決定」を行います。
最終月経と超音波での計算でずれが生じた場合は、より正確な超音波からの分娩予定日に「修正」を行います。分娩予定日の修正はよくあることであり、それだけで赤ちゃんの異常を心配したり、ご自身のホルモンバランスの異常を心配しすぎたりする必要はありません。
週数に応じた発育を見るため、分娩予定日は妊娠初期に一度決めたら変更しません
正確な分娩予定日は流産・早産の診断、赤ちゃんの成長が正しいかの診断(胎児発育不全や巨大児でないか)、過期妊娠の診断に必要です。そのため、妊娠初期(できれば13~14週ごろ)までに決定することが重要です。赤ちゃんが週数の平均より小さい場合などは、「予定日を遅めに変更する」ということはせずに、小さい原因を探る必要があります。
<参考文献>
・日本産科婦人科学会. 産婦人科診療ガイドライン産科編2023. CQ009 分娩予定日決定法については?.
・岡本愛光 監修.ウィリアムス産科学.原著25版,南山堂,2019,1626p.
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(産婦人科医 杉村航大)