働いている方が受ける「健康診断」。妊娠・授乳中は健康診断を受ける必要があるのでしょうか?今回は「妊婦健診」との違い・関連性も含めて整理します。
「妊婦健診」と「健康診断」は別です!
妊娠中は継続して「妊婦健診」を、産後は「産後健診」を受けます。この健診は「健康診査」の略で、産婦人科医・助産師などが妊婦・赤ちゃんの健康状態について確認するものです。
これに対し、いわゆる「会社の健診」は「健康診断」と略され、働く人の健康状態について、様々な検査を用いて内科的に確認するものです。
同じ「健診」ですが、行っていることは違うのです。
また、よく勘違いされるのが「検診」です。これは「検査・診断」の略で、よく「がん検診」などで使われます。特定の病気(がんなど)を見つけるための検査のことなので、これも混同しないようにしましょう。
妊娠・授乳中でも「健康診断」は受けましょう
時々聞かれるのが、「妊婦健診を受けているから、会社の健診は受けなくて良いのでは?」という声。この2つは別なので、妊婦健診を受けていても、会社の健診を受けなくてよいわけではありません。
労働安全衛生法で、雇用されている方は1年に1回の「健康診断」を受ける義務が定められています。これは会社が「働ける健康状態か」を確認するために行っており、妊婦でも受けなくてはなりません。
ただし、産前産後休業・育児休業中は受診義務の対象から外れ、復帰後に受ければ良いこととされています。
どの検査項目を受ければいい?
定期健康診断では主に以下の項目を検査します。(年齢によって一部省略可)
- 問診(業務歴・既往歴など)
- 身体測定(体重・身長など)
- 血液検査
- 尿検査
- 血圧・心電図
- 胸部X線検査(レントゲン)
このうち、X線検査以外は妊娠・授乳中でも全く問題なく受けられます。妊娠中にも行うことがある検査ですし、妊娠経過や赤ちゃんへの影響はありません。
X線検査も、適切に対処すれば妊娠・授乳中でも受けることができます。
ただし、健康診断でも省略可能項目になっているため、多くの施設で妊娠・授乳中の場合は行わないでしょう。帝王切開を行う前などで撮ることが産婦人科でもありますが、これは手術に必要なためであり、健康診断の際には省略するのが多いと考えられます。
妊娠中でも「会社の健診」は働く上で大事なものです。しっかり違いを理解して、両方ぜひ有効活用してくださいね。
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師にご相談ください。
産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後、そして女性の健康に関する不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。
(産婦人科医・産業医 平野翔大)