「マタニティハラスメント」とは?~実際に受けたときの対応~

最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン

安心して妊娠・出産・育児と仕事を両立するためには職場の環境も大事。今回は安心できる環境を妨げる「ハラスメント」について、万が一受けてしまったときの対策をまとめました。

ハラスメントには断固とした対応を

ハラスメントは法律でも定められている、「あってはならないこと」です。妊娠・出産や育児は社会が持続するために必要なことであり、仕事を理由にハラスメントが許されてはいけません。ハラスメントを受けた場合にはまず明確に「NO」を言う周囲に相談することが重要です。

同時に言われたことや状況をメモなどの記録に取っておきましょう。いきなり無断で録音などをすると揉める原因になりかねませんので、まずはすぐに「日時・場所・状況・言動」を記録するのが望ましいです。

後で触れますが、企業や行政に相談窓口もあるため、基本的に泣き寝入りせず、何らかの対応をしっかりと取ることが重要です。この時に「記録」は重要な証拠になります。

ハラスメントと不利益取扱いの違い

ただし「ハラスメント」と「不利益取り扱い(ふりえきとりあつかい)」は別で考える必要があります。ハラスメントは「個人の言動などにより就労環境を害する」ものの、具体的な不利益をもたらすものではありません。

しかし妊娠を理由とした会社による「解雇・雇い止め」「減給・降格」「意に反する異動」など、具体的な不利益をもたらすものは、男女雇用機会均等法で禁止されている「不利益取扱い」であり、ハラスメントより重大な問題です。

つまり「退職届を書け」と上司が言えばハラスメントですが、実際に書かされて退職すれば不利益取扱いということです。なぜここを区別するかというと、ハラスメントには「防止措置」が企業に義務付けられていますが、不利益取扱いはそもそも「禁止」されているためです。ハラスメントを行うのは個人ですが、不利益取扱いは企業によるものであり、ただの言動でなく実際の手続きを伴うものなので、より重大な問題になります。

もしハラスメントや不利益取扱いを受けたら相談窓口を利用しましょう

マタニティハラスメントは、企業が「防止措置」を講ずることが義務付けられています。その中には「相談窓口の設置」があるため、企業内に相談窓口がある場合はまず相談するとよいでしょう。明確な窓口がない場合は人事・労務担当で相談することが多いです。

しかし、企業内に窓口がない、もしくは会社が相談を受け付けない場合には、都道府県労働局の「雇用環境・均等部(室)」が窓口になります。

また不利益取扱いを受けた場合にも、企業での相談が難しいことも多いので、同じように都道府県労働局に相談すると良いでしょう。

マタニティハラスメント・不利益取扱いは受ける方は辛いですが、泣き寝入りすれば続いてしまい、多くの被害者を生んでしまいます。法律にも定められた「義務」が会社にあることも理解し、断固とした対応を取ることが大事です。

<参考文献>

産婦人科オンラインジャーナル.「マタニティハラスメント」とは?~定義や法律について~.

厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部. 「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!」

厚生労働省. 妊娠・出産をサポートする女性にやさしい職場づくりナビ, 「妊娠・出産・育児休業、介護休業等を理由とする不利益扱いの禁止と妊娠・出産・育児休業、介護休業等に関するハラスメントの防止」


さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師にご相談ください。

産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後、そして女性の健康に関する不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。

(産婦人科医・産業医 平野翔大

SNSでシェア