最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン
妊娠や子育てというライフイベントを通して幸福を感じる方もいれば、多くの課題に直面し、ストレスを抱える方もいます。本当にこれでいいのかと不安になったり、物事がうまく進まないことに辛さを感じ、心が苦しくなってしまうという経験がある方もいるのではないでしょうか。今回は、そんな気持ちとうまく向き合い、心を整える方法をお話しします。
つらい事柄の原因を決めつけず、一つの考えにとらわれないよう心掛けてみましょう
私たちは、自分の気持ちや置かれている状況を絶えず主観的に判断し、それに基づいて考えたり行動したりしています。
例えば「育児が辛い」「思い通りの行動ができずに悲しい」などという気持ちに苛まれると、「自分のせいでそうなった」と思ったり、「こんな気持ちになるのは母親失格だ」という考えにとりつかれてしまったりすることがあります。
そのようなネガティブな気持ちのサイクルにはまってしまった時には、「今起きている辛い事柄の原因は、本当に自分が悪いからなのか?他にも原因があるかもしれない」と客観的に考えてみることが大切です。
例えば、泣き止まない赤ちゃんを前にして、「泣き止ませられない自分は母親失格だ」と考えたとします。しかし、ここで客観的に考え直してみると、違った理由が思い浮かぶかもしれません。赤ちゃんが泣き止まないのは、「お腹が減った」「抱っこしてほしい」「眠れない」といった様々な原因のせいであって、お母さんのせいではないのではないでしょうか。
大事なのは、一つの考えにとらわれず、「こうも考えられるし、ああも考えられる」と複数の視点を持つことです。すると「赤ちゃんが泣く」=「母親失格」という訳ではなく、「授乳もしたし、抱っこもしているし、母親として出来る事は実践している」と、できている点にも目を向けることができるようになります。
このような考え方をすることで、必要以上に自分を責めてしまう苦しさから解放され、気持ちが楽になることがあります。
一つの考えにとらわれないためのポイントは、「他者の力を借りること」、「自分会議をすること」、そして「気持ちをリセットする方法を持つこと」です
ポイント1:他者の力を借りること
誰かに気持ちを話すことは、自分が物事の一面しかみていないこと、そして他の考えもあることに気付く最善の方法となります。一人で解決しようとせず、家族や信頼できる友人、助産師や保健師、医師などの専門家に相談しましょう。
ポイント2:自分会議をすること
他者にすぐに相談できない時は、もしもあなたのように辛い気持ちになっている人がいたら、「自分だったらどんなアドバイスをするかな」と考えてみましょう。もしかしたら辛い気持ちに共感し、「よく頑張っているよ」「あなたのせいじゃないよ」と声をかけたくなるかもしれません。「信頼できるあの人だったらどう考えるかな。私に何て言ってくれるかな」と想像してみるのもよいと思います。
ポイント3:気持ちをリセットする方法を持つこと
短時間でも自分の気持ちをリセットできる方法を持つことも効果的です。例えば、次のようなものがあります。
○窓を開けて外の空気を感じる
○深呼吸をする
○ストレッチやヨガをする
○自分の気持ちを書き出してみる
○好きな音楽をかける
○好きな動画を見る
完璧を目指すよりも、「いいかげん」=「よい加減」に行動を変えていきましょう
家事や育児には「こうでなくてはならない」ということはありません。
育児中は特に、授乳、オムツ替え、山のような洗濯に自分達の食事の準備など、全て完璧にすることは至難の業です。
妊娠中もそうですが、育児中の長い期間を乗り切るには、目標を下げて「いいかげん」すなわち「よい加減」に力を抜き、そんな自分を許してあげることがとても大切です。無理をすると途中でエンジンが切れてしまい、心身の健康を害してしまうことになりかねません。
ぜひ長いスパンでお子様やご家族の為、そしてなによりもご自身の為に、日々の家事や育児は「よい加減」に力を抜いて、時には休むことも心掛けましょう。
前述した気持ちをリセットする方法は、忙しい時間の合間でもできますので、ご自身にあった方法でお試しくださいね。
マタニティブルーズや産後うつ病について知りたい方は、こちらの記事も参考になさってください。
辛い気持ちに立ち向かうことは、簡単なことではありません。
そんな時に安心して相談できる場所を探しておきましょう。そして少しでも自分の気持ちや考えに向き合う時間を持ち、一つの考えにとらわれないよう、日頃から心がけましょう。
<参考文献>
大野裕. はじめての認知療法. 講談社. 2016.
福井至 他. 認知のゆがみを直せば心が楽になる. 扶桑社ムック. 2018.
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの助産師にご相談ください。
産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後の不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。
(助産師 小松由美子)