最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン
AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査で卵巣予備能(卵巣に残っている卵子の量)を把握できます。不妊治療でよく使われる大変有用な検査ですので、簡易的に説明したいと思います。
AMH検査で卵巣予備能がわかります
AMH検査は、卵巣予備能という卵子の「量」を推定するのに有用な血液検査です。卵子は卵胞という袋の中に存在し、卵胞が大きく成熟するまでに成長過程があります。AMHは、その成長途中の卵胞内の細胞から分泌されるホルモンです。
どんなことでも質と量が重要ですが、卵子の「質」は年齢に大きく依存しますので、個人差の大きい「量」をAMHで推測しておくことが不妊治療の治療計画を考える際に大変役立ちます。一般的に、AMHが高い人は体外受精の採卵でたくさんの卵子を獲得できる傾向にあります。
AMH検査で把握する不妊治療のスピード感
体外受精は、注射などを使って卵胞をたくさん育てた後に採卵し、精子と受精させて受精卵を獲得します。多くの場合、1回の採卵で1,2個しか卵子が取れない人と10個取れる人では妊娠成立するまでの期間が大きく異なります。
AMHの値が低い人は、高い人と比較して受精卵の獲得・貯蓄に時間を必要とするので、その分早い段階で体外受精を考えるほうがよいでしょう。AMHは、タイミング療法や人工授精といった一般不妊治療から、体外受精へステップアップを考える時期を検討する上での参考材料となります。
AMH検査で誤解しないように注意すること
AMHの値は若くても低いことは多々あり、そのまま妊娠率と相関しないため、「値が低いから妊娠率が低い」わけではありません。AMHはよく卵巣年齢と表現されますが、これはやや不適切です。
AMH検査は客観性が高く、検査が月経周期のどの時期でも概ね一定の値が得られる点が優れています。しかし一方で、測定誤差は約10-15%前後あり、排卵期や直近のピルの使用などで低めに検出されることがあります。
上記の点を理解していただき、AMH検査をうまく活用して卵巣予備能を把握し、年齢を鑑みながら適切にスピード感をもった生殖医療を受けて頂くことが妊娠への近道と考えます。
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師、助産師にご相談ください。
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(産婦人科医 佐古 悠輔)