吸引分娩と鉗子分娩についての正しい知識

最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン

「吸引分娩」や「鉗子(かんし)分娩」という言葉を聞いたことがありますか?自分のお母様や先輩ママさんからお聞きになったことがある方でも、実際どのようなものなのかはイメージがわかないと思います。しかし、どのような方でも吸引分娩・鉗子分娩となる可能性があります。今回は、「吸引分娩」「鉗子分娩」についてまとめました。

吸引分娩・鉗子分娩は器械を使って分娩する方法です

吸引・鉗子分娩ともに、いわゆる自然分娩ではなく、器械を使って赤ちゃんを引っ張って出す分娩のことです。
吸引分娩では、カップ状の器械を赤ちゃんの頭につけて、赤ちゃんを娩出します。カップは、プラスチックやゴムでできていて、赤ちゃんの頭に合うように小さいお茶碗のような形をしています。カップは別の器械につながり陰圧(吸引圧)をかけることができるので、頭に密着して引っ張ることができます。

鉗子分娩では、大きなスプーンのような金属製の道具(=鉗子と呼ぶ)で赤ちゃんの頭を挟み、引っ張って出す分娩のことです。2本の鉗子をお母さんの腟内に挿入して組み合わせると、赤ちゃんの頭をしっかり挟むことができます。鉗子分娩では、産婦人科医が人力で引っ張って赤ちゃんを娩出させます。

どんな時に吸引分娩・鉗子分娩をするの?

吸引分娩・鉗子分娩は、急いで分娩を終了させる必要がある場合や経腟分娩が難しい場合に選択されます。例えば、赤ちゃんの心拍数が下がって仮死の恐れがある場合や、お母さんの血圧が高くなりすぎて危険な場合が当てはまります。難産で分娩時間が長くなり、お母さんがもう自力だけでは分娩できないほど疲労してしまった場合にも行われます。

条件としては、子宮口が開いて赤ちゃんが十分に下がっている状態であること、産婦人科医がその手技に習熟していることなどがあります。吸引・鉗子のどちらを行うかはその病院や医師によりますが、どちらかの方法が優れているというわけではありません。吸引分娩・鉗子分娩を試みて分娩にできない場合には、そのまま緊急で帝王切開術を行う必要があります。

吸引分娩・鉗子分娩は適切に行えば危険ではありません

吸引・鉗子分娩ともに、適切に行えば危険な手技ではありません。
しかし、自然な陣痛で分娩するわけではないため、産道の傷が大きくなることがあります。

吸引分娩では、吸引の圧力によって赤ちゃんの頭が縦に伸びた形になりますが、自然に元通りになります。まれに、頭の皮膚の下に出血して血がたまってしまうことがあります。

鉗子分娩では、赤ちゃんの顔に鉗子で挟まれた痕がつくことがありますが、それも自然に消えてしまいます。赤ちゃんが生まれてくる時の頭の向きが極端に斜めになっていると眼を挟んでしまうことがありますが、視力には影響がないことがほとんどです。


さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師にご相談ください。

産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後、そして女性の健康に関する不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。

(産婦人科医 田中啓

SNSでシェア