最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン
妊娠の成立のためには、排卵、受精、着床というプロセスが必要であることこちらの記事に書きました。今回は、妊娠が上手く成立しないときに、まず行う基本的な検査としてどのようなものがあるかについて、解説したいと思います。(男性側の検査も同時に必要なのですが、この記事では女性への検査のみとさせていただきますね)
排卵がうまくいってるかどうかは、血液検査と超音波で確認します
一つ目の不妊の原因である排卵障害(排卵がきちんとできない)があるかないかを判定するためには、血液検査と超音波の検査が必要です。うまく、一つの卵胞が育ってこない多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の場合には、特徴的なホルモンバランスの変化(LHとFSHの変動)と超音波所見(卵巣に小さな袋が複数見える)が認められます。LHは排卵を起こすためのホルモン、FSHは卵胞を育てるためのホルモンで、いずれも脳の一部、下垂体というところから分泌されます。他にも、乳汁(おっぱい)を出すためのプロラクチンというホルモンが高くなりすぎてないかを調べることもあります。
また、基礎体温をつけていると、排卵がきちんと起こっているかどうかの参考になることもあります。
血液検査や超音波の検査で、排卵に問題があると判断される場合には、何らかのホルモン治療が必要になることがあります。
子宮の形と卵巣の通りを評価する卵管造影検査は必須です
次に、子宮の形と卵管(精子および卵子の通り道)が通っていることを確認する必要があります。子宮の中に造影剤を入れて、レントゲンを撮影する子宮卵管造影とよばれる検査です。
子宮卵管造影を行うことによって、卵管の通りが評価できるだけでなく、卵管が通りやすくなり、その後数か月は妊娠しやすくなるともいわれています。
もし、子宮卵管造影で両側とも卵管の通りが悪い場合は、自然に妊娠する可能性は低いと判断されます。その場合には体外受精を考える必要が出てくるかもしれません。
子宮卵管造影は、人によっては痛みを伴うこともありますが、今後の治療の方針の決定のためには、極めて重要な検査といえます。
超音波検査で子宮・卵巣の病気があるかの確認をします
子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣腫瘍などの病気があると、その大きさや位置によっては妊娠しづらくなることがあります。これらは多くの場合、腟からの超音波あるいはMRIの検査で見つけることが可能です。
妊娠の成立に影響がありそうな子宮筋腫や卵巣腫瘍が見つかった場合には、妊娠をトライする前に手術を勧められることもあります。
上に述べた、血液検査、子宮卵管造影および超音波の検査は、不妊症の原因を探るための基本的な検査といえるでしょう。血液検査と子宮卵管造影は、月経周期のなかでもできる時期が限られているため、何回かの通院が必要になります。男性に対する基本的な検査が(多くの場合は)1回で終了し、なおかつ身体的な痛みを伴わないのに対し、女性は数回の検査が必要なので、その分大変です。しかし、それだけをみても男性というものがいかに単純で、女性がそれに比べて複雑な存在であることの象徴だといえなくもないですね。
不妊症に対する治療は、生殖医療とよばれ、産婦人科の分野のなかでも著しい発展を遂げている分野の一つです。この記事を読んでより不安を感じた方もおられるかもしれませんが、検査なくして原因の究明はできませんし、原因がわかれば治療法もあります。検査を受けるべきか悩んでいる場合には、お気軽に産婦人科へご相談いただければと思います。
*参考文献
・日本産科婦人科学会. 一般の皆様へ. 不妊症.
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師にご相談ください。
産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後、そして女性の健康に関する不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。
(産婦人科医 竹中裕)