不妊症の基礎知識〜妊娠の仕組みと不妊の原因〜

最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン

現在の日本では、不妊に悩んでいるカップルは少なくありません。5-6組に1組は子供が欲しいことを悩み、医療機関を受診するといわれています。少しでも、その原因について知っておくことは、受診する際の医師の説明を聞くうえでも、大きな助けになるでしょう。不妊の原因としては、男性側の理由によるものが約1/3, 女性側の原因によるものが約1/3、そして、原因不明の場合が約1/3とされています。ここでは、女性に原因がある場合、どのようなことが考えられるか、わかりやすく説明していきます。

妊娠の成立には、排卵、受精、着床というステップが必要

月経周期のある女性は、毎周期、1個の卵子を排卵しています。排卵は左右の卵巣から、ランダムに起こります。卵子は排卵後、卵管を通ってきた精子と、卵管の途中(卵管膨大部)で出会い、受精が起こります。受精した卵子はそこから子宮内に移動し、そこで子宮内膜に着床します。

これらのプロセスのどこかに上手くいかない原因があると、なかなか妊娠しないという悩みにつながっていきます。

月経が不規則な場合は、排卵していない可能性もあります

妊娠の最初のステップである「排卵」が上手くいかない場合には、月経周期が乱れたり、長くなったりすることがあります。代表的な病態としては、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)があります。これは、本来、ひと月に1個の卵子を包む袋(卵胞)が育ってくるべきところ、いつまでも育つべき卵胞が一つにしぼられず、結局排卵されないという状態です。

その他には、卵巣に指令を出すべき脳の一部分からうまくホルモンが出ない(下垂体性の無月経など)ことが原因の場合や、乳汁(おっぱい)を出すホルモン分泌が多くなる病態(高プロラクチン血症)が原因のこともあります。

卵管、子宮が原因で不妊となる場合もあります

排卵の次のステップは「受精」です。受精するためには、精子は卵管の中を通って移動しなければなりません。卵管の通りが悪いと、精子や卵子は卵管膨大部(卵管の途中の部分)までたどり着けません。性感染症(クラミジアや淋病など)や子宮内膜症にかかったことがあったり、過去の骨盤内の手術などは、卵管の通りを悪くする原因になることがあります。

また、上手く卵子と精子が出会えても、いざ受精、着床という段階で、上手くいかないこともあります。子宮は、筋肉でできた、ふくろ状の臓器で、その内側が赤ちゃんの育つ部屋となります。子宮筋腫や子宮内膜ポリープが邪魔をしたり、子宮の内側(子宮内腔)に癒着があったりすると、そのせいでうまく妊娠しない(着床できない)ということがあります。

ここまで読まれた方は、上の文章を読んで、余計に不安になったかもしれません。実は、妊娠というのは、多くの偶然(あるいは必然)が重なってはじめて可能な現象なのです。上手く妊娠が成立しない場合は、それはたまたま上手くいかないだけかもしれませんし、実際に何らかの原因があるのかもしれません。もし、何らかの原因がある場合には、治療という選択肢があります。
次の記事では、原因究明のために、どのような検査があるのかをご紹介したいと思います。

*参考文献
・日本産科婦人科学会. 一般の皆様へ. 不妊症.


さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師にご相談ください。

産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後、そして女性の健康に関する不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。

(産婦人科医 竹中裕

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