産後は家族の危機!?産後クライシスってどうして起きるの?

最終更新日: 2024年6月14日 by 産婦人科オンライン

「産後クライシス」という言葉を知っていますか?直訳すると「産後の危機」、「夫婦仲の悪化」のことを指します。では、なぜ危機を迎えてしまうのでしょう。そして、どう乗り越えていけばよいのでしょうか。

産後クライシスとは「出産後2〜3年程の間に起こる急激な夫婦仲の悪化」をいいます

産後クライシスとは、出産後から2〜3年程の間に夫婦仲が急激に悪化し、最悪の場合は別居や離婚といった、夫婦関係の危機に陥ることをいいます。

昨今は約3組に1組が離婚し、ひとり親になった時の末子の年齢別では、0〜2歳の離婚が38%と一番多いです。また、ベネッセ教育総合研究所の調査によると、夫を「本当に愛していると実感」している妻は妊娠期に74.3%だった一方で、0歳児期には45.5%に減少し、子の成長に応じてさらに減る傾向があると報告されています。

では、なぜ妻の夫への愛情が出産を機に減ってしまうのでしょうか。

産後のホルモン、夫の言動、家事育児参加など、様々なことが原因と考えられています

産後は、出産による身体的なダメージが大きいだけでなく、妊娠中に分泌されていた女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロンなど)が大きく減ってしまうことによって、精神的不調を招きやすい状況にあります。

「プロゲステロンは敵対効果を助長する」とも言われており、母親が「自分を理解したり、支えてくれない」と判断すると、たとえ家族であっても攻撃的な態度をとってしまうことがあります。また、エストロゲンが低下することによって、女性は性欲や性感が下がることもあります。妊娠中から産後にかけての夫や家族の何気ない一言が妻にとって大きなストレス、トラウマとなり、長年に渡り気にしている方も少なくありません。

さらに、核家族の増加や女性の社会進出もあり、産後2〜3年の子育てに手がかかる時期に、母親に育児や家事の負担が偏りがちなことや、相談する窓口が分からない場合もあるでしょう。さらに、SNSの普及により周りの夫と比較したり、”イクメン”という言葉の浸透に比して、夫の育児、家事の内容が妻の満足に達しない場合もあります。

妊娠中からお母さんに起こりうることを予測し、夫婦で話し合うことが大切です

一般的に、男性が父親としての自覚を持ちはじめるのは女性より遅れることが多いと言われています。だからこそ、まずは母親自身が産後の自身の変化や状況を知る必要があります。
また、夫婦で産後の生活をイメージし、どんな変化が起こるのか、そのためにはどんな準備が必要かを話し合っておくことが大切です。妊婦になった気持ちを体験したり、産後の生活をイメージするために夫婦で両親学級に参加するなども良い機会になると思います。
そして、「育児初期の家庭にかかる負担は、妻一人では背負いきれないもの」と、夫婦で危機感を持つことも大切です。

企業によっては、子の誕生が男性の働き方に影響しづらい現状もありますが、男性の産後すぐの育児参加が、産後クライシス予防の重要な鍵となるでしょう。夫や家族の休暇は、退院後の家事や少しでも母親が休息をとるための支援に充てると良いでしょう。
また、母親自身から助けて欲しいサインを出せない場合も多く、まだお互いが育児に不慣れな場合は、地域の社会資源に頼ることもできます。妊娠中から起こりうることを予測し、産後の「こんなはずではなかった」のギャップが生じないように準備することが大切です。

自分のことで精一杯の時には相手を思いやることが困難です。お互いに相手の気持ちや状況を想像したり、何かしてくれた時には当たり前と思わず、感謝や称賛を伝えられると良いですね。妊娠中からの心構えについては、こちらも参考にしてください。
「夫婦」から「親」になるために妊娠中から知っておいてほしいこと

周りとは比較せず、ご自身の家庭、家族はどうしていきたいかを話し合い、産後クライシスが生じないよう妊娠中からご夫婦で準備していきましょう。

*参考文献
Benesse次世代育成研究所 第1回妊娠出産子育て基本調査・フォローアップ調査(2011)


さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの助産師にご相談ください。

産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後の不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。

(助産師 中島香織)

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