帝王切開後の傷のケア 〜綺麗なお腹を目指して〜

帝王切開という大変な手術を終え、赤ちゃんのことで手一杯になってしまいがちな産後ですが、傷のケアもとても大事です。ケアで気を付けたいことや創部の異常についてまとめました。

ケアの大原則は①安静、②保護、③清潔

経腟分娩と帝王切開、どちらも体力を消耗してとても大変なものです。しかし産後は赤ちゃんのケアをしなければならないので、なかなか体を休める暇がないですよね。私たち産婦人科医が創部(傷口)を綺麗に縫合(専用の糸で創を縫うこと)することも大事なのですが、「自宅での創部ケア」も傷痕をきれいに保つために、とても大事です。

ケアの大原則は①安静、②保護、③清潔です。
具体的なケアの方法を次に述べていきます。

創部に無理な力がかかることを避け、テープでの保護や清潔を保つよう工夫しましょう

一般的に、手術直後は創部に専用のテープが貼ってあります。退院時に創部をチェックするために執刀医がテープを剥がす場合もありますが、基本的には自分で無理に剥がすことはしないようにしましょう。
このテープは創部を固定して、傷口のズレを防ぎ、創部の「安静」を保ちます。重い荷物を持ったり、動きすぎたりしないことも創部の安静につながります。

また、最近はシリコーンテープなど創部保護専用の創傷被覆(ひふく)材も市販されています。それらの被覆材を上手に使い、衣服との擦れなどの刺激から創部を「保護」することが大事です。
被覆材は術後2~4週間経過したころから使いはじめ、3~6ヶ月後には使用をやめるとよいでしょう。使い始める時期の判断に困る際は、主治医に相談してもよいでしょう。

そしてお風呂に入るときは必ず創部を優しく洗って「清潔」にしてあげましょう。ボディーソープなどは使用せず、お湯で洗い流す程度でも十分です。もしボディーソープを使用する際は、よく泡立てたもので軽く擦る程度に洗い、創部に泡が残らないように洗い流しましょう。

創部の異常を感じたら病院へ相談しましょう

体質的なものもありますが、お腹を縦に切った方の約1/3、横に切った方の約1/6で創部の異常が起こってしまうと言われています。主なものが肥厚性瘢痕とケロイドです。

肥厚性瘢痕は傷が赤く盛り上がり、痛みや痒みを伴います。ケロイドは肥厚性瘢痕と似ていますが、正常な皮膚にまで異常が広がり、より症状が重いものです。いずれも形成外科などでステロイド軟膏を使用したり、異常のある部分を切除したりと、専門的な治療が必要になることがあります。
退院後に創部の異常を感じたら、主治医や形成外科医に相談してください。

赤ちゃんのお世話に大変な産後ですが、ぜひ帝王切開後の傷のケアもしっかりして、自分の体を労ってあげてください。

*参考文献
・周産期医学vol.41 No.6 2011-6 帝王切開時の創部癩痕予防・治療.
・腹腔鏡手術創部におけるシリコーンゲルシート(LadyCare3)の安全性と有効性. 日産婦内視鏡学会第36巻第1号 2020-4.

さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師、助産師にご相談ください。

産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後、そして女性の健康に関する不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。

(産婦人科医 野口 将司)

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