授乳中に解熱鎮痛剤は安心して使ってもいいの?その根拠は?

最終更新日: 2024年3月22日 by 産婦人科オンライン

解熱鎮痛剤は、授乳中の方にとって使用頻度の高いお薬の一つだと思います。その多くは、内服方法と用量をきちんと守っていれば、授乳中の使用は特に大きな問題のないことが分かっています。しかし、どうして安全だと言えるのでしょうか。その点について解説していきます。

「母乳から乳児へ薬の成分がどの程度移るか?」が安全性を判断する一つの指標です

授乳中の薬の安全性は、医学的な指標を参考に評価されています。例えば、相対的乳児投与量(RID)という代表的な指標(母乳から乳児へ薬の成分がどの程度移るか示す指標)があります。
この指標では、「数値が10%以下ならば、母乳に移行する薬の量が少なく安全だろう」と考えられています。実際、多くのお薬のRIDは1%未満です。

解熱鎮痛剤の一つ、イブプロフェンという薬のRIDは、0.38%未満であり、かなり微量と分かっています。また、他の多くの解熱鎮痛剤のRIDも、ごくわずかだということが分かっています。

赤ちゃんの副作用報告も参考にされています

私たち医師は、RIDだけではなく、母乳を飲んだ後の赤ちゃんの副作用に関する最新の医学的な報告なども、お薬の安全性を考える際の参考にしています。

一般的に授乳中の使用が安全だと紹介される解熱鎮痛薬は、授乳中の赤ちゃんに起こった副作用の報告がこれまで特にない、あるいは報告があっても副作用の発生自体が非常に稀なレベルです。
そのため、そのような解熱鎮痛剤を授乳中に使用することは安全だろう、と考えられています。

授乳中に安全だと考えられている解熱鎮痛剤の具体例は?

熱や痛みがある時に、我慢しすぎるのは辛いことです。以下に、これまでに説明してきた根拠から安全だろうと考えられているお薬をご紹介します。是非ご参考にして下さい。
・アセトアミノフェン (カロナール®︎)
・イブプロフェン(ブルフェン®︎)
・ジクロフェナク(ボルタレン®︎)
・ロキソプロフェン(ロキソニン®︎)
*( )内は代表的な商品名。

赤ちゃんの副作用については、心配しすぎなくても概ね大丈夫ですが、薬の内服後は、授乳後の赤ちゃんの体調も一緒に見ておくと、なお安心でしょう。
また、必ず薬ごとの用法用量を守ってご使用ください。医師から合併症などの理由で薬の使用に注意を出されている場合は、必ず担当医の指示に従うようにしてくださいね。

以上のことを参考に、必要なお薬を安全に使い、産後の生活をより過ごしやすいものにしていただくと良いと思います。

*参考文献
Drugs and Lactation Database (LactMed).
国立成育医療センター「授乳中に安全に使用ができると考えられる薬」.


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(産婦人科医 田村 真希

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