妊娠中・産後の子宮頸がん検診って何のため?

「子宮頸がん検診」、日本では20歳以上の女性は2年に1回、受診するよう定められていますが、妊娠して初めて検査を受けるという方も少なくないのではないでしょうか。そして、妊婦健診で結果だけ知らされてもこの検診の意味をあまりわからずにいる方もいらっしゃると思います。
産婦人科医の立場から、子宮頸がんに対する正しい知識を知ってもらい、子宮頸がん検診をきちんと受診してもらいたいと思い、記事を作りました。

子宮頸がんはウイルス感染症から起こる

胃がん、大腸がん、肺がんなど人間には色々ながんが存在します。その原因として、喫煙・生活習慣・遺伝など様々な要因が挙げられていますが、その中で子宮頸がんの多くは、ウイルス感染によって起こることがわかっています。

このウイルスとはヒトパピローマウイルス(HPV)というものであり、これは性交渉歴のある女性であれば誰でも感染しうるものです。感染しても9割以上は自然に治ってしまうのですが、ごくわずかの人に持続感染が起こり、子宮頸がんが発生してしまいます。

妊娠中は、万が一、癌の診断が遅れてしまうと、治療の遅れや妊娠継続との兼ね合いなど重要な問題が出てきてしまうため、初期の健診で必ず検査することが決められています。
では、HPVに感染したかどうかはどのようにわかるのでしょうか?

子宮頸がん検診って何をみているの?

HPV感染が起きても症状はありません。つまり、自分自身では感染したかどうかがわからないのです。このため、妊娠初期に必ず検査が行われますし、できれば産後も子宮頸がん検診にご自身で行きましょう。

検診では、HPV感染によって発生する異常な細胞を調べるための「細胞診」という方法で検査を行います。この検査はブラシで子宮頸部の表面の細胞を拭うごく簡便なもので、1-2分で終わります。あまり痛みを伴うこともありません。
では、この検査で陽性だった人は子宮頸がんなのでしょうか?

子宮頸がんになる前の「グレーゾーン」が存在する

もちろん、「子宮頸がん検診陽性」=「がん」ではありません。子宮頸がんには「異形成」という、正常とがんの間のグレーゾーンの状態が存在します。

HPV感染が起きてから、最終的に子宮頸がんに到達するまで、5〜10年程度、異形成の状態が続くと言われています。子宮頸がん検診ではこの異形成というグレーゾーンの段階から陽性と扱っているため、「子宮頸がん陽性」=「異形成以上の状態」というのが正しい理解です。

つまり、妊娠中の検査で異常がなくても、その後数年かけて異常な細胞が出現する可能性もあるということです。
では、異形成と診断されたらどうしたら良いでしょうか?

「グレーゾーン」の治療法

異形成は全部で3つのレベルに分けられます。細かい話は割愛しますが、自然に治る異形成もあれば、そうでない異形成もあります。多くの場合が前者ですが、後者の場合であっても短時間の手術で治せる可能性があります。これは30分から1時間程度の小手術で、身体の表面に傷も残りませんし、その後の妊娠も可能です。

ただし、妊娠中の手術は大きなリスクを負いますし、産後に受ける場合でも手術によって次回の妊娠に影響が出る可能性があります。

いかがでしたでしょうか?子宮頸がんは感染症から起こるという特徴があり、がんになる前の黄信号を示してくれます。
一方で、日本の子宮頸がん検診は受診率40%程度で、これは欧米と比べてとても低い数字です。産婦人科医として、この状況は非常に悔しい気持ちになります。なぜなら、子宮頸がんはがんになる前の段階で見つけることができ、なおかつ治療可能な病気だからです。
妊娠・出産はゴールではなく、むしろスタートです。その後の育児の為にも、お母さんは健康である必要があります。妊娠初期に受けた検診をきっかけに、産後もぜひ子宮頸がん検診を続けてみてほしいと思います。
*子宮頸がん検診はお住いの自治体で検査料金の補助があります。詳しくは各自治体へお問い合わせください。


さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師、助産師にご相談ください。

産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後の不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。

(医師 赤羽宏基