梅毒という病気を聞いたことはありますか?江戸時代に遊郭で流行したことでも知られている性感染症ですが、2021年以降急増していることで最近注目されています。今回は、梅毒の予防法や症状、新しい治療法などについてまとめました。
梅毒は主に性行為で感染します
梅毒は、感染者の病変部位と皮膚や粘膜が直接触れ合うことで「梅毒トレポネーマ」という細菌が感染することにより発症します。主に性交渉(口腔性交や肛門性交も含む)の際に感染しますが、性器以外の体中のあらゆる部分の皮膚にある小さな傷からも感染する可能性があります。
コンドームの使用による予防が一番重要ですが、コンドームでおおわれている部分以外からの感染も起こりうるため、100%予防しきれないという現状を知っておく必要もあります。
梅毒の症状は時期により多岐にわたり、性器以外の症状もあります
梅毒の症状は病期によって様々であるため、性感染症とは気づかずに放置してしまうことも少なくはありません。
<Ⅰ期(感染後数週間)>
細菌が侵入した部位にしこりや潰瘍ができることがあります。また、鼠径部(そけいぶ)のリンパ節が腫れることもあります。痛みがなく自然に消える場合も多いため、受診に至らないことも少なくありません。
<Ⅱ期(感染後数か月)>
細菌は全身に運ばれ、バラ疹とよばれる淡い赤い色の発疹が、全身の皮膚に出現します。バラ疹は、数週間以内に自然に消えることもありますが、繰り返し出現することもあります。
アレルギーや他の感染症などと間違えられることもあり、この段階でしっかりと診断をし治療をすることが重要です。
<晩期(感染後数年)>
ゴム腫と呼ばれるゴムのような腫瘤が皮膚や筋肉、骨などに出現したり、大動脈瘤などを伴う心血管梅毒や、神経麻痺が起こる神経梅毒などを引き起こし、命に関わることもあります。
梅毒は進行する前にしっかりと治療を行うことが重要です
梅毒の診断は、血液検査や顕微鏡の検査によって確定されます。どの病期にあたるかは、症状の経過に関する詳しい問診により判断されます。
梅毒は、抗菌薬により治療が可能な感染症です。これまで日本では内服薬を1日3回 何週間(期間は病期による)も継続する治療が必要でした。そのため、治りきっていないうちに治療中断されるケースが少なくなく、問題となっていました。
2021年9月には、世界標準の治療法である「持続性ペニシリン製剤(商品名:ステルイズ®)」の筋肉注射が、日本でも承認されました。これにより、早期梅毒では1回の筋肉注射により治療を完了することが可能になりました。
近年増加傾向にある梅毒についてご紹介しました。梅毒は治療可能な感染症です。疑わしい症状がある場合は、お近くの婦人科・皮膚科等にご相談をおすすめします。
<参考文献>
医薬品医療機器総合機構. ステルイズ水性懸濁筋注60万単位シリンジ/ステルイズ水性懸濁筋注240万単位シリンジ.
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(産婦人科医 青栁百合)