絨毛膜下血腫と診断されましたが大丈夫ですか?

最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン

赤ちゃんの心拍が確認できて一安心と思っていた矢先に…。「絨毛膜下血腫」と診断され、初めて聞く名前に不安になる方もいらっしゃるかと思います。「切迫流産とは違うの?」「動き過ぎたらいけなかったの?」「赤ちゃんは大丈夫?」などの疑問にお答えします。

絨毛膜下血腫は切迫流産の原因の一つです

絨毛膜下血腫(じゅうもうまくかけっしゅ)とは、超音波検査で胎囊(赤ちゃんを包んでいる袋)の周りに血腫(出血した血液が溜まったもの)ができた状態のことを言います。

一方、「切迫流産」とは、妊娠21週までの間に「流産になるかもしれない症状」があることを示します。症状には、性器出血・腹痛・子宮頸管長の短縮があります。そして、切迫早産に伴う性器出血で最も頻度の高い原因が絨毛膜下血腫です。つまり切迫流産の原因の一つが絨毛膜下血腫、ということになります。

また、性器出血の自覚はないけれども超音波検査で血腫がみられ、絨毛膜下血腫と診断されることもあります。発症頻度は報告により大きく異なりますが、最大で全妊婦さんの22%に認められたという報告もあります。

動き過ぎて絨毛膜下血腫になる訳ではありません​​

絨毛膜下血腫は胎囊と子宮筋層の間で、絨毛(胎盤の元となる組織)の一部が剥がれることで生じるとされています。ただ、詳細な発症のメカニズムはまだ分かっておらず、発症の明確な原因も明らかにはなっていません。

絨毛膜下血腫とされた場合、一般的には過度な運動は避けた方がいいとされています。ただし、安静にした場合とそうでない場合を比べた場合、両者の経過に差はないとする報告も多いです。

そのため、「動き過ぎたらいけなかったのでは」とご自身を責める必要はありませんし、「絶対安静にしなきゃいけない」と日常生活を過度に制限する必要はないでしょう。激しい運動は避け、かかりつけの産婦人科からの指示に従うといいでしょう。

流産や早産にならないことの方が多いです

絨毛膜下血腫と診断された方は、妊娠や赤ちゃんへの影響が心配になりますよね。実際には、絨毛膜下血腫と診断されても、徐々に出血も落ち着き、問題なく妊娠が経過し元気な赤ちゃんが生まれる方の方が多いです。

ただし、絨毛膜下血腫の中には流産・早産などにつながることもあります。感染が合併しているケースや、血腫が大きいケースでその傾向があるとされています。血腫の体積が胎嚢の25〜50%を越える場合に流産率が上がるとする報告がある一方で、血腫の大きさや出血量は流産のしやすさに関係ないとする報告もあります。

具体的な対応は担当医に相談・確認を

絨毛膜下血腫に対する対応として、止血剤・黄体ホルモン剤・抗菌薬などが処方されることもあります。しかし、流産予防効果が確立された薬物療法はないのが実情です。

薬剤の使用や、どの程度までの安静とするかなど、絨毛膜下血腫への対応は、ご自身の状況にあわせてかかりつけの産婦人科で相談してみてください。

また、かかりつけ担当医に聞きそびれてしまった疑問点などあれば、産婦人科オンラインの医師へのご相談も検討してみてください。

<参考文献>
Christopher P. Bondick, Joe M Das, Howard Fertel. National Library of Medicine, NCBI StatPearls ”Subchorionic Hemorrhage”. July 31, 2023.


さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師にご相談ください。

産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後、そして女性の健康に関する不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。

(産婦人科医 安井 理

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