妊娠初期の人工妊娠中絶は日帰りで実施可能な手術です

最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン

妊娠はおめでたいことですが、様々な理由により妊娠を諦らめなければならないことがあるのも事実です。日本において人工妊娠中絶は妊娠21週6日までであれば実施可能です。本稿では、そのうち妊娠12週頃までに実施される人工妊娠中絶手術に関して記載します。(それ以降の時期には、入院して「分娩」のかたちをとることが多くなります)

中絶の手術と流産の手術は、同じ手術

手術の具体的な手技に関しては、麻酔、子宮頸管の拡張、内容物の除去、というステップが必要です。これらの方法は、流産の手術と同様です。

以下の順番で実施されます。

  1. 多くの場合、局所麻酔、全身麻酔、あるいはその併用で行われます
  2. その後、子宮頸管の拡張
  3. 続いて、子宮内容物の除去

という流れになります。麻酔も含めて、これらの処置は10~20分程度、長くても30分程度で終了します。

3の子宮内容物の除去についてですが、かつては、金属製の機械を用いて子宮の内容物を摘出する方法(そうは法)が主流でした。現在は、プラスチック製あるいは金属製の器具を用いて子宮内容物を吸引する方法(吸引法)で手術を行っている施設も増えています。

手術の合併症には、子宮の穿孔(子宮に穴が開く)、感染、出血、再手術などがあります。しかし、その件数は1000件中4件程度かそれ以下とされています。

中絶の費用は保険適用外

流産の手術が、「病気」に対しての治療の扱いとなり、保険が適用されるのに対し、中絶の手術はあくまで病気とは異なる手術の扱いとなることから、健康保険が適用されず、自費での手術となります。

全ての産婦人科の医療機関で中絶手術を行っているわけではありません。また、入院可能な施設でなくとも中絶手術を行っている医療機関もあります。近隣の産婦人科が中絶手術を行っているかどうかは、医療施設のウェブサイトや、電話等で確認するのが良いでしょう。

予期せぬ妊娠を防ぐことが重要

誰も、望んで中絶の手術を受けるわけではありません。低用量ピルの服用や子宮内避妊具など、避妊効果の高い方法が存在します。中絶を経験した場合には、その後の妊娠・避妊について、医療者と相談することも重要です。

2023年5月に、経口の中絶薬が日本でも使用可能になりました。認定された施設で薬を服用し流産を人工的に起こします。本記事では初期の妊娠に対する人工妊娠手術に関して概説いたしました。中絶を考えている方は、手術にするか経口薬にするかも、医師とご相談ください。

<参考文献>

厚生労働省.「いわゆる経口中絶薬「メフィーゴパック」の適正使用等について」

Nakamura E, et al. Medical Safety and Education Committee of the Japan Association of Obstetricians and Gynecologists (JAOG), Tokyo, Japan. Survey on spontaneous miscarriage and induced abortion surgery safety at less than 12 weeks of gestation in Japan. J Obstet Gynaecol Res. 2021 Dec;47(12):4158-4163.


さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師にご相談ください。

産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後、そして女性の健康に関する不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。

(産婦人科医 竹中裕

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