最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン
HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについて聞いたことはありますか?このワクチンには子宮頸がんなどを引き起こすHPVの感染を予防する効果があります。今回は2020年に承認され、2023年4月からHPV感染予防の定期接種に新たな選択肢として追加された9価HPVワクチンについて、その効果や対象者、注意点などをわかりやすく解説します。
HPVに感染すると、子宮頸がん、肛門がん、中咽頭がんなどの原因となることがあります
HPVは主に性行為を通じて感染するウイルスです。全部で200種類以上の型が確認されており、その一部の型が子宮頸がん、肛門がん、中咽頭がんの原因となることが知られています。特に子宮頸がんの95%以上はHPV感染によって引き起こされます。このため、HPV感染を防ぐワクチンが重要な役割を果たします。
9価ワクチンは、既存のワクチンの効果を高めたものです
HPVワクチンには、2価、4価、9価の3種類があります。2価(製品名:サーバリックス)は、子宮頸がんの原因となるHPV16型と18型の2種類を、4価(製品名:ガーダシル)は、この2種類に加え尖圭コンジローマの原因となるHPV6型と11型の4種類をカバーしていました。
そして2020年に接種可能となり、2023年4月から新たに定期接種での使用も可能となった9価(製品名:シルガード9)は、これらの4種類に加えてさらに子宮頸がんの原因となるHPV31、33、45、52、58型の計9種類とより多くの型をカバーします。15歳までに接種を開始したら2回の接種で完了となります(15歳以降では3回接種が必要です)。日本の子宮頸がんの原因となるウイルス型の実に約90%に対応しており、その意味で子宮頸がんやその前がん病変の予防効果は9価ワクチンが最も高いといえます。
接種は初めての性交渉前が最も効果的です
HPVワクチンは初めての性交渉前に接種することが男女問わず最も効果的です。日本では26歳までの女性で接種が勧められており、特に小学校6年生から高校1年生までの女性であれば定期接種として無料でワクチン接種を受けることができます(*)。
もちろん、男性や27歳から45歳までの女性でも有効性が示されていますので、自費(全三回で約10万円)にはなってしまいますが接種することが可能です。高額ではありますが9価HPVワクチンは幅広い保護効果があるため、多くの人々にとって有益な選択となります。ぜひ一度お近くの産婦人科に取り扱いがあるかなどお問い合わせください。
*2価・4価ワクチンを接種中の方も自治体によっては9価ワクチンへの移行が可能です。また定期接種の時期を超えていても、キャッチアップ接種として無料での接種が可能かもしれません。各自治体にお問い合わせください。
9価HPVワクチンは大変効果的です。4価ワクチンと比較してアレルギーなどの副反応も多くないとされています。ぜひ推奨されている年齢の方は、子宮頸がんや他のがんのリスクを大幅に減らすことができる9価HPVワクチンの接種をご検討ください。
参考文献
厚生労働省. 「9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(シルガード9)について」
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師にご相談ください。
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(産婦人科医 小椋 淳平)