ご家庭で性の話を伝える時の3つのポイント

最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン

「家庭での性教育は大切」と感じている保護者の方も多いと思いますが、実際に子どもへどんな風に話したらよいか分からない時ってありませんか?
今回はご家庭で性の話を伝えるときの3つのポイントをご紹介したいと思います。

年齢や理解度に合わせて科学的に伝えましょう

ご家庭で性の話をするときの1つ目に大切なことは、”科学的”に伝えることです。
世界的に広く推進されている包括的性教育(Comprehensive Sexuality Education:CSE)は、学校などの教育機関にかかわらず、ご家庭でも積極的に取り入れてほしい内容です。
包括的性教育に関してはこちらに詳しく書かれていますのでご参照ください。

例えば「赤ちゃんってどうやってできるの?」というお子様からの質問に対して、突然聞かれると大人はドキッとしてしまいますよね。「コウノドリが運んできたのだよ」とはぐらかしてしまったり、事実とは違うことをいってしまったりすることもあるかと思います。このような質問は、言葉を話しはじめた頃のお子様からもされたりしますが、はじめは性交そのものに関心があるわけではなく、単純に「人の誕生」という知的好奇心によって質問される場合が多いです。

包括的性教育に関する国際的ガイダンスでは、妊娠や出産をテーマにした年齢別の教育内容として、
・~5歳:からだの各部位の名称の理解
・5~8歳:排卵、受精、着床などの妊娠・出産までのプロセス
・9~12歳:若年妊娠のリスクや避妊法
・12~15歳:避妊具のアクセス方法、使用法
・15~18歳以上:健康な妊娠を手助けするための習慣、不妊について
などがあげられています。

同じテーマでも年齢や理解度に合わせ、はじめは知識から伝えます。徐々に行動へ移せるよう、態度やスキルへステップアップし、今までの学習に新しい情報を積み上げていきます。妊娠や出産にもいくつかの選択肢があること、そしてその中から自分の価値観を身につけ、自己決定能力を高めていけるようにサポートします。

もちろん大人自身がどのように説明したらよいかと迷う場合もあります。時に「うまく説明できないから整理してから伝える」と返したり、「あなたはどう思う?」と理解度を確認したり、潜在的な悩みを知るというような返し方もよいかと思います。子どもの話を聞いてあげること、大人も一緒に学ぶ姿勢でいることが大切です。

子ども自身がポジティブに捉えられるように肯定的に話しましょう

性の知識をステップアップしていくには、自分自身のからだが大切であると感じたり、大人になっていく過程に起こりうる身体の変化を子ども自身が期待をもって迎えられるようになることが大切です。

例えば『性器』の名称や機能や扱い方を伝えるときには、「恥じるもの、汚いところ」と表現するよりも「大切なところ、清潔にしておくところ」と表現をする方が肯定的な表現といえます。さらに、自分では触ってもよいところだけど乱暴に扱わない、プライベートな場所だから人には見せない触らせない、自分で触れる場合は人目のないところで、というマナーを伝えていきます。

また『月経』など大人になると現れる変化に関しては、痛くてめんどくさいものと感じている方もいるかもしれませんが、定期的な周期で月経があることは女性の一生涯の健康を維持していく上でとても重要なイベントでもあります。もちろん月経周期に伴い痛みや心理的な不安定さを伴う場合もありますが、ネガティブな部分だけを強調して子どもに伝えるのではなく、「毎月くることで肌や体の調子を整えてくれるのだよ」などと、ポジティブな伝え方や「成長の証だね、困っていることはない?」と困ったときに相談してほしいことを伝えておくことが重要です。(もちろん、月経に伴う辛い症状には適切な対処の選択肢があることも伝えてあげましょう)

様々な性を尊重できるように、多様性を伝えましょう

多様性といっても一言で表現するのは難しいですが、例えば『性』も男女だけの単純な2パターンだけではありません。

性は
・身体の性
・性自認(自分が感じる性)
・性的指向(どんな性に恋愛感情を抱くか)
・性表現(言葉遣い、服装など)
によって様々なパターンがあり、必ずしも男と女という表現だけで表されるものではありません。すべての人が多様な性(ソジ:SOGIE)の中に存在し、誰もがそれぞれのセクシュアリティを持っており、それらの選択は自由です。

ジェンダーステレオタイプ(社会的につくられた性別への先入観)になるべく固執せず、子どもの遊びや選択を制限しないことが重要です。

ご家庭で性の話を伝える3つのポイントを今回まとめましたが、子どもに正確な情報を伝えようとハードルを高くもつ必要はありません。
大切なことは、身近な大人が性のことを気軽に相談できる関係になれることです。話してくれて、聞いてくれてありがとうの気持ちを伝え、子ども自身が意思決定できるように寄り添っていくことが大切です。

性教育は自分が自分らしく生きていく上で必要な教育であり、幼少期からご家庭でもはじめることができます。
大切なことは日々の積み重ねと継続です。教育機関での性教育に加え、性に関する理解を各ご家庭でも深めていくこと、この2つを両輪で進めていくことをおすすめします。性教育は気軽にご家庭でも実践できるものであってほしいなと思います。

*参考文献*
国際セクシュアリティ教育ガイダンス
SIECUS SEX ED FOR SOCIAL CHANGE
・公益社団法人日本助産師会保健指導部会委員会.助産師による思春期の健康教育,日本助産師会出版,2020
・浅井春夫.親子で話そう!性教育,朝日新聞出版社,2020

さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの助産師にご相談ください。

産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後の不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。

(助産師 齊藤麻木

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