「やせ」が妊娠と赤ちゃんに与える影響

最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン

日本では、若い世代の女性の間で「やせ」志向が強く、「やせ」すぎ女性が増えているという問題が指摘されています。また、慣習的に、妊娠中に体重が増えすぎると厳しく注意される風潮もあります。しかし、妊婦の「やせ」は、妊娠経過や赤ちゃんの発育に影響を与えることがあります。

「やせ」は早産や胎児発育不全のリスクになります

臨月(妊娠37週以降)より前に赤ちゃんが生まれてしまうことを早産と言います。赤ちゃんは早く生まれてしまうと、臓器の発達・成熟が不十分なために、NICUの入院が必要です。最悪の場合、亡くなってしまったり、重篤な後遺症を残したりすることもあり得ます。

早産の原因はたくさんありますが、疫学的に、やせている女性は早産になりやすいことが報告されています。また、やせている女性では、妊娠週数に比べて赤ちゃんの体重が小さいこと(=胎児発育不全)が比較的多いという報告もあります。このような赤ちゃんは、生まれた後に低血糖になりやすいなどの特徴があり、やはりNICU入院が必要になります。

早産や胎児発育不全で生まれた赤ちゃんは、大人になってもその影響が残り、生活習慣病にかかりやすい傾向があることも報告されています。なお、これらは、妊娠前からの「やせ」も、妊娠中の体重増加が少なすぎることも、両方にあてはまります。

BMI18.5未満が「やせ」になります

では、どの程度の体重が「やせ」になるでしょうか?目安となる基準は、BMI(body mass index)という単位を使って判断します。
BMI = 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
という式で計算します。

そして、国際基準(WHO)での妊娠前の「やせ」(underweight)は、BMI18.5未満とされています。例えば、身長160cmの女性では、47.4kg未満ですと「やせ」に判定されます。なお、BMI18.5以上25未満の範囲が適性(normal weight)とされています。

妊娠中の適性体重増加量を知っておきましょう

また、妊娠中はどのくらい体重が増えるのがちょうどよいのでしょうか?妊娠中の適性体重増加量については、様々な基準が発表されていますが、国際基準(IOM)では以下のようになっています。
妊娠前に「やせ」の人:12.5 – 18.0kg
妊娠前に「適性」の人:11.5 – 16.0kg

これをアジア人の体型にそのまま当てはめてよいのかは議論がありますが、少なくとも10kg程度の妊娠中の体重増加は十分許容されると思っていただいてよいと思います。妊娠前に太っていない妊婦さんが、分娩までに10kg未満しか体重が増えていないのは少なすぎると言えるでしょう。


さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師にご相談ください。

産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後、そして女性の健康に関する不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。

(産婦人科医 田中啓

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