最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン
産後1ヶ月の頃は、育児が順調だったり苦戦中だったりと様々な生活を送られていることでしょう。ただ、どんなお母さんや赤ちゃんでも、産後1ヶ月健診は必ず受けてほしい診察です。
産後1ヶ月健診でどのようなことを行うのかご説明いたします。
(1ヶ月健診はお母さんと赤ちゃん両方のためにありますが、今回はお母さん側の検査についてご説明いたします。)
チェック項目その①:お母さんの身体が産前の状態に戻ってきているか?
産後1ヶ月健診では、以下の検査や測定を行います。
<体重・血圧測定、尿タンパク検査>
出産直後は赤ちゃん・胎盤・羊水がなくなることで体重が約4kg減ると言われていますが、出産後の体重変化について確認します。
妊娠中に高血圧だった方はもちろん、正常だった方も産後に血圧が上がることがあるため、血圧が正常値(収縮期140mmHg/拡張期90mmHg未満)であるかを確認します。また尿タンパクがでていないかも確認します。
<内診・経腟超音波検査>
まず、会陰切開などの傷がきちんと治っているか確認します。そして、悪露の色や量、子宮の中の出血のたまり具合を確認します。一般的に悪露は産後1、2ヶ月頃にほとんどなくなり、色も赤→茶→黄色のように徐々に変化していきます。
産後1ヶ月時点の診察で明らかに悪露が多い場合は、子宮収縮剤の内服薬が処方されることもあります。
<帝王切開の創部の診察>
帝王切開で出産された方は、傷の治りに問題ないか、感染の兆候がないかなどを確認します。
そのほかにも、妊娠中に妊娠糖尿病などの合併症があった方や、診察で異常が見つかった場合には、他の検査が追加されたり、その後のフォローアップ(通院)が必要になることもあります。
チェック項目その②:乳房の状態や母乳の出方に問題ないか?
母乳の出具合や、赤ちゃんが上手に飲めているかを助産師さんがチェックしてくれます。母乳の分泌量、乳頭の形や授乳方法、赤ちゃんの個性など、個人差がとても大きいところなので、お母さんの悩みも多種多様です。
授乳が上手に出来ていないと、赤ちゃんが満足して母乳を飲めないばかりか、お母さんが乳腺炎になってしまうリスクがあります。
ぜひ、気軽に普段困っていることや疑問点などをなんでも助産師さんに聞いてみましょう。
チェック項目その③:気分の落ち込みや悩んでいることはないか?
また、お母さんが精神的なストレスやトラブルを抱えていないかを確認することもとても重要です。
妊娠中〜産後1年以内に発症するうつ病を「周産期うつ病」と呼び、10-15%のお母さんが産後にうつを発症すると言われています。悲しいことに、うつ病などを原因に自殺してしまう妊産婦さんの数は、妊娠中や分娩時の身体的合併症で亡くなる方の数の2倍以上という報告があります。
うつ病の疑いがあるお母さんを早い段階で見つけるために、スクリーニング検査「エジンバラ産後うつ病質問票」を行ったり、必要に応じて専門カウンセラーや精神科へつないだりすることができます。
このように、産後1ヶ月健診は、お母さんの心と身体の健康をチェックする大事なイベントです。必ず受けるようにして、困っていることはなんでも相談するようにしてくださいね。
*参考文献
・国立成育医療研究センター. 人口動態統計(死亡・出生・死産)から見る妊娠中・産後の死亡の現状.
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師にご相談ください。
産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後、そして女性の健康に関する不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。
(産婦人科医 尾市 有里)