最終更新日: 2024年3月27日 by 産婦人科オンライン
GBS検査という名前を妊婦健診中に聞いたことがある方も多いと思います。これは妊娠後期にほとんどの妊婦さんが受けるもので、新生児の健康状態に関わってくる重要な検査です。今回はこのGBS検査についてまとめてみました。
GBSは細菌の一種で、妊娠後期に内診で検査します
GBSはGroup B Streptococcusの頭文字をとったもので、B群溶血性連鎖球菌という細菌です。この細菌は、腟や膀胱、肛門の周りなどに常在していることがありますが、ほとんど症状は無く、体に害を与えることもありません。アメリカの統計では妊婦の4~5人に一人が腟や直腸にGBSを持っているという報告があり、身近にある細菌だということがわかります。
GBSの検査は妊娠35~37週の間に行われ、綿棒で腟の入り口や肛門内を軽くこすって検体を採取します。検査の結果は、通常1週間程度で判明します。
GBSの新生児への影響は?
GBS陽性(=GBSが腟周囲にいる)のお母さんから生まれた新生児のうち、GBSに感染してしまうのは1%前後と言われています。
新生児GBS感染症には早発型と遅発型があることが分かっています。
・早発型:出生当日に発症することが多く、呼吸障害、敗血症、髄膜炎などを認めます。
・遅発型:出生7日目以降に発症し、髄膜炎になる割合が早発型よりも高いと言われています。
新生児GBS感染症が実際に発生する頻度は、決して高くはありません。しかし、ひとたび発症すると急激に悪化し、非常に重症となった場合には、赤ちゃんの命を助けられなかったり後遺症が残ったりすることもあります。そのため、事前のGBS検査と出産時の感染予防が重要なのです。
新生児への感染予防として出産時に抗菌薬を点滴投与します
新生児GBS感染症の予防として、GBS陽性の妊婦さんでは、陣痛が始まったり破水を認めたりしたときに、ペニシリン系の抗菌薬を点滴で投与します。一回の投与は30分以内に終わりますが、これを出産するまで4時間ごとに繰り返します。
またGBS陽性の妊婦さん以外にも、前回の出産のときにお子さんがGBS感染症であった場合、GBSを保有しているかどうか不明の状態で破水から18時間以上経過した場合、分娩進行中に38度以上の発熱がある場合などに、やはり抗菌薬の予防投与を行うことがあります。
なお、帝王切開で出産される方で、手術前に陣痛や破水が起こっていない場合には、抗菌薬の予防投与を行う必要はありません。
この予防法は新生児感染を100%防ぐことができるわけではありませんが、抗菌薬を投与することで新生児GBS感染症の発症を20分の1に抑えることが出来ると考えられています。
いかがでしたでしょうか。妊婦健診中にGBS陽性と診断されると非常に不安に感じますよね。しかし必ずしも赤ちゃんに影響が出るわけではないこと、何より予防が重要であることをご理解いただき、少しでも安心してご出産に臨むことができればと思います。
*参考文献
・CDC. Group B Strep (GBS).
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(産婦人科医 神保 覚子)