最終更新日: 2024年3月22日 by 産婦人科オンライン
妊娠中や授乳中はカフェイン摂取を控えないといけないことは知っていても、実際どのくらい摂取していいのか悩みますよね。カフェインがご自身や胎児、赤ちゃんに及ぼす影響と、具体的な摂取基準について説明していきます。
妊娠中・授乳中のカフェイン摂取を注意したい理由
一般的に、カフェインには血管を収縮させる作用があります。摂取しすぎると中枢神経系が過剰に刺激され、めまい・心拍数の増加・興奮・震え・不眠などの症状が起こります。消化器管が刺激されることにより、下痢・吐き気・嘔吐が起こることもあります。
また、妊婦が過剰に摂取すると、血管が収縮することで胎盤に流れる血液の量を減少させる可能性もあるため、胎児の発育を阻害(=低体重となる)する可能性があると報告されています。それに加え、妊娠中はカフェインの代謝機能が低下するため、カフェイン代謝にかかる時間が妊娠前の2倍以上になることもあるといわれています。
授乳中のお母さんが過剰に摂取すると、母乳を通してカフェインが移行し、赤ちゃんの寝つきが悪くなったり、落ち着きがなくなったりする可能性があります。また、乳児は代謝機能が未熟なため、カフェイン代謝に約80時間程かかります。その分の影響も出やすいといえるでしょう。
コーヒー2杯分程度が1日のカフェイン摂取量の目安です
日本では、厚生労働省による妊娠・授乳中の1日当たりのカフェイン摂取許容量の定められた基準がありません。諸外国では、WHOで300mg/日・欧州食品安全機関(EFSA)で200mg/日・カナダ保健省(HC)で300 mg/日に制限することを推奨しています。このことから、200mg〜300mg/日が望ましいといえるでしょう。
代表的な飲み物のカフェイン含有量(100ml中)は、レギュラーコーヒー約60mg・紅茶約30mg・ 緑茶約20mg・ウーロン茶約20mg・コーラ約10mgです。実際の目安としては、1杯200mlとして、コーヒー2杯程度・紅茶4杯程度・緑茶6杯程度となります。茶葉の種類や抽出方法によって多少変わってきます。詳しくは、商品に記載されているカフェイン量等の表示で確認してください。
また、チョコレートにも100g中30mgと微量ながらカフェインが含まれています。食べる時は少しだけ注意してみてください。
上手にカフェインと付き合っていきましょう
推奨摂取量を超えたからといって、必ず影響が出るわけではありません。今まで摂取量が多かった方は、これを機に気をつけていけば大丈夫です。一般的には、「過剰な量を何週間か継続して摂取する」ことがなければ、悪影響がはっきり出る可能性は高くないだろうと考えられています。
日常生活でできる工夫としては、以下の3つが挙げられます。
①ハーブティー・ノンカフェイン・カフェインレスのお茶を上手に取り入れる。
②熱湯より水出しの方がカフェイン含有量が少なくなるので、入れ方の工夫をする。
③母乳中のカフェイン濃度のピークは摂取後15分〜30分。2時間後から半分以下になるため、授乳前より授乳後にカフェインを摂取する。
など少しの工夫で過剰摂取や悪い影響を避けられるでしょう。
妊娠中・授乳中にカフェインを摂取すること自体は問題ありません。適量のカフェインには、眠気覚しや集中力を高めるなどのプラスの作用があります。摂取量に気をつけて、楽しいティータイムを過ごしてください。
*参考文献
・厚生労働省 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A〜カフェインの過剰摂取に注意しましょう〜
・EFSA explains risk assessment
・カナダ保健省(CH)
・文部科学省 第2章 日本食品標準成分表
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの助産師にご相談ください。
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(助産師 小堀千辺)