最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン
よくある妊娠中のトラブルの一つに、皮膚の痒みや発疹があります。実は、痒みや発疹の種類や原因は様々ですが、ほとんどが妊娠に反応しておこるものです。しかし、感染・薬を原因とする、妊娠とは関係ないものもあります。それぞれの特徴や対応についてご紹介いたします。
妊娠に関連した4つの皮膚疾患とその対応をチェック
妊娠に関連した代表的な皮膚の疾患は、①妊娠性掻痒症、②妊娠性痒疹、③PUPPP (掻痒性蕁麻疹様丘疹)、④妊娠性疱疹があります。それぞれの特徴については以下の通りです。
①妊娠性掻痒症
発疹は出ず、痒みのみが強く出るため、皮膚症状はひっかき傷として現れる。
②妊娠性痒疹
妊娠中期頃から現れることが多く、腕や足に小さく赤い湿疹ができる。夜間にかゆみが強くなりやすい。
③PUPPP (掻痒性蕁麻疹様丘疹)
妊娠後期頃から現れることが多く、蕁麻疹のようなやや盛り上がった赤い湿疹が全身に現れる。お腹周りが一番多い。
④妊娠性疱疹
妊娠による湿疹の中で最も稀で、水疱(すいほう。水ぶくれのような見た目。)を伴う赤い湿疹ができる。
これらの皮膚の疾患は、赤ちゃんへの影響はほとんどなく、通常は出産後に自然に良くなります。主な治療は、ステロイド剤の塗り薬やクーリング(適度に冷やす)となりますが、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤やステロイドの内服を行うこともあります。
また、以下のような一般的なスキンケアも重要なので、ぜひ心がけてくださいね。
①出来るだけ引っ掻いたりしない
②汗をかいたら早めに優しく拭き取る
③入浴時にナイロンタオルで洗わない
④ボディソープをしっかり洗い流す
⑤入浴後に保湿をする
妊娠に関連しない皮膚症状の場合もあります
持病の悪化や、たまたま妊娠中にかかってしまう皮膚症状もあります。感染や薬疹(薬が原因で起こる発疹)が原因のときは、急いで診断・治療が必要となるので注意が必要です。
①持病の悪化
アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎(金属・ゴム・化粧品など)、脂漏性湿疹などの持病が、妊娠中に悪化することがある。
②ウイルス感染症(麻疹・風疹など)
発熱・風邪症状・関節痛などがある時は疑われる。胎児感染を起こす可能性がある。
③薬疹
過去数日〜数週間以内に薬を服用しており、全身に発疹があれば薬疹も疑われる。使用中の薬は出来るだけ中止した方が良いが、その判断にはかかりつけへの相談が必要。
④多形滲出性紅斑(薬剤・溶連菌感染・マイコプラズマ感染などが原因となる)
丸く盛り上がった赤い皮疹が全身に現れる。重症化すると、目の充血や口や陰部の粘膜がただれたり、内臓にも異常が起こるため、緊急に治療が必要な状態。
⑤皮膚真菌症
外陰カンジダなど。腟の常在菌であるカンジダは、外陰部に炎症をおこすこともある。抗真菌薬などの外用薬が有効。
症状によっては産婦人科か皮膚科で早めに受診しましょう
痒みや湿疹は妊婦さんによく起こる症状で、一般的には妊娠に関連したもので緊急性の低いものが多いです。ただ、激しい痒みは痛みよりも辛いことがあるので、症状が強い場合には応急処置のために早めの受診をお勧めします。産婦人科か、妊娠していることを伝えた上で皮膚科に受診するのがいいでしょう。
また、感染が疑われる症状(発熱・風邪症状・筋肉痛など)があるときは、前もってかかりつけの産婦人科に連絡したあと、なるべく早めの受診が必要です。発疹が短時間でどんどん広がっていく時も、早く治療をしないと重症化してしまう可能性があるので、緊急の受診が必要です。
このように、妊娠中におこる皮膚トラブルの原因は様々です。適切な診断と治療が大事になりますので、かゆみや発疹などの症状がある時はかかりつけに相談するようにしましょう。
*参考文献
・ACOG FAQ. Skin Conditions During Pregnancy.
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師・助産師にご相談ください。
産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後、そして女性の健康に関する不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。
(産婦人科医 尾市 有里)