最終更新日: 2024年4月3日 by 産婦人科オンライン
新型コロナウイルス大流行の中、赤ちゃんとお家で過ごしていると、心配なことがたくさんあると思います。ママとのコミュニケーションの一つでもある母乳育児をどうしたらよいか、毎日の生活の中でできる感染対策についてご紹介します。
新型コロナウイルスに感染したら母乳はどうするの?
これまでの研究報告や関連組織からの指針をご紹介します。
中国の報告では、新型コロナウイルスに感染したママの母乳を通して赤ちゃんに感染したという報告は今のところありません。
WHO(世界保健機関)では、ママが感染している(感染している可能性がある)時に母乳をあげる際には、マスクをつけ、手で触れる場所は定期的に消毒し、しっかり手洗いするなどの感染対策を推奨しています。(WHO. Coronavirus disease (COVID-19). Breastfeeding.、WHO. Breastfeeding and COVID-19. )
日本小児科学会、米国小児科学会でも母親が新型コロナウイルスに感染している場合には、接触や咳を介して子どもに感染させるリスクがありますが、適切な感染対策を行えば、子どもに感染させる確率は増加しないことを報告してます。また、母乳の利点を考えれば、母親の病状が許せば母乳栄養を行うことを推奨しています。
新型コロナウイルスは未知のウイルスのため、現在進行形で研究が進んでいます。絶対に母乳育児をしても大丈夫、絶対にやめた方が良いということは明確になっていません。ご自身とご家族の気持ちを大切にしつつ、病院スタッフと話し合って決めていきましょう。
搾乳によって母乳育児を続けることができます
母乳には、免疫機能を高め炎症を抑えるラクトフェリンというタンパク質など、赤ちゃんの身体を守るために必要な成分がたくさん含まれています。
赤ちゃんに直接母乳をあげられなくても、搾乳という方法があるので、母乳育児をあきらめることはありません。母乳の分泌を維持するためには、乳頭に刺激を与え続けることが必要です。直接母乳をあげる時と同じくらいのタイミング(3−4時間毎など)で母乳をしぼり、おっぱいにスイッチを入れ続けていくことが大切です。搾乳前には手を洗い、搾乳機を使う際には、スイッチなど手が触れる部分の消毒を行いましょう。
感染対策は手洗いから!手の保湿と咳エチケットも忘れずに
新型コロナウイルスは、手に付着して身体の中に入ることが1番多いと言われています。手洗いの3つのコツと、咳エチケットをご紹介します。
- 20秒以上かけて石鹸やハンドソープで指の間や爪の間、手首まで忘れずに洗いましょう。
- 擦り込み式手指消毒剤を15秒かけて擦り込みましょう。十分な量を手に擦り込んだ後、手が乾いてから消毒効果が発揮されます。
- 手洗いや消毒を続けていくと皮膚がカサカサになってしまいます。乾燥やひび割れ、炎症によってばい菌が増えていくこともあるので、ハンドクリームなどで保湿も忘れずに行いましょう。
咳やくしゃみを通しても感染が広がっていきます。咳やくしゃみでウイルスを広げないために、マスクをつけたり、咳やくしゃみの時には肘で口と鼻を覆いましょう。咳やくしゃみをした後は手洗いを忘れずに行いましょう。
新型コロナウイルスの流行により心配なことはたくさんあるかと思いますが、できることから1つずつ始めていきましょう。
<参考文献>
- 厚生労働省資料(感染症対策)
- CDC. Guidelines for Hand Hygiene in Healthcare Settings(2002)
- ACOG. COVID-19, Pregnancy, Childbirth, and Breastfeeding: Answers From Ob-Gyns
- 奥起久子:COVID-19パンデミックと母乳育児 – ガイドラインをめぐる考え方を中心に-. 日本新生児成育医学会雑誌.2022,34(2)133-138.
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの助産師にご相談ください。
産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後の不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。
(助産師 山﨑あや)