最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン
別記事(「月経困難症に対する鎮痛法を解説します」)で月経困難症の鎮痛法についてお話しましたが、月経困難症の治療の選択肢のひとつである、子宮内挿入器具(商品名:ミレーナ)について紹介します。
子宮内に小さな器具を入れて月経をコントロールする方法
現在、月経困難症に対する治療の子宮内システム(子宮内に挿入するタイプの医療器具)で医療保険適用となっているのは、ミレーナという製品です。ミレーナは黄体ホルモン(女性の体内で分泌されているホルモンの一つ)を持続的に少しずつ放出する器具です。
そもそも、月経の前に子宮内膜が厚くなって、それが剥がれ落ちることで月経血となります。黄体ホルモンは、子宮内膜の増殖を抑える働きがあるので、子宮内膜を薄い状態とさせ、月経血量を減少させるとともに月経痛を軽くする効果があります。
ミレーナを挿入すると黄体ホルモンの作用により子宮内膜がうすくなるため、月経の回数が減り、約20%の人では月経が起こらなくなります。一度挿入すると最長5年間、そのまま使用できます。
産婦人科で経腟エコー後にミレーナを挿入します
ミレーナを挿入する時は、経腟エコーで子宮の状態(向きや大きさ、筋腫の有無など)を確認した後に、腟鏡を挿入した状態で子宮口から細い棒の先に装着されたミレーナを子宮内に挿入します。
お産の経験がある方のほうが痛みは少ない傾向にありますが、痛みの感じ方は子宮の状況により個人差があります。スムーズに挿入できれば、数分で挿入可能です。
ミレーナ挿入中の注意点や受診が必要な時を覚えておきましょう
ミレーナ装着後数日間は出血、下腹部痛、腰痛、おりものの増加などの症状があわれることがあります。 症状が長く続くときやひどい場合は受診をご検討ください。
また、月経の出血日数が延長したり、月経時期以外の出血が起こることがあります。月経の一番多いときよりも多い出血が続く場合は受診をおすすめします。
ごく稀ですが、ミレーナが気付かないうちに抜けてしまったり、ミレーナが子宮の壁に入り込んでしまうことがあります。また、子宮の中で菌が繁殖してしまうことがあるので、発熱や強い腹痛がある場合は受診する必要があります。
基本的にはミレーナ挿入中には妊娠しませんが、子宮内に妊娠したり、異所性妊娠といって、卵管などに妊娠してしまうことがあります。前回の月経から6週間以内に月経が起こらない場合や、吐き気、嘔吐、食欲不振などのつわりのような妊娠を疑う兆候があらわれた場合は、妊娠している可能性があるので受診してください。
ミレーナ挿入中は定期的な受診が必要です
ミレーナの位置や出血の状況などを確認する定期検診はとても重要です。かかりつけの先生の指示どおりに検診してください。通常は装着の1ヵ月後、3ヵ月後、6カ月後、1年後、それ以降は状況に応じ、1年に1回以上の検診が指示されます。1 年以上装着する場合は、異常を感じなくても以後必ず1 年に1度は検診を受けるようにしてください。
また、装着後5年を超えないうちに交換・除去する必要がありますので、4年目・5年目の定期検診の際に、交換・除去のタイミングについて相談しましょう。
いかがでしたでしょうか。子宮内システムは、注意点はいくつかありますが、基本的には挿入後は毎日の薬の内服も不要であり、月経困難症に有効で便利な治療法です。特に出産経験のある方は挿入も比較的簡便であり、おすすめできると思います。
かかりつけの先生と相談し、ご自身にあった月経困難症治療を受けられるといいと思います。
*参考文献
・ミレーナ52mgとは.(バイエル薬品株式会社ウェブサイト)
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師にご相談ください。
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(産婦人科医 大村美穂)