最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン
妊娠を考えている時や妊娠中に、感染しないよう気をつけなければいけない病原体は様々です。その中で、赤ちゃんの先天性障害の原因となる頻度が最も高いのは、サイトメガロウイルスであることをご存知でしょうか?
成人が感染しても風邪程度の症状しか出ない
サイトメガロウイルスは、世界中のありふれたところにいるウイルスです。主に母乳・唾液・尿や血液を介して感染しますが、知らないうちに子供の頃に感染していることが多いです。症状は無症状や風邪のような軽い症状が殆どです。
約70%の女性が、妊娠可能年齢で既に感染歴があり免疫を持っているのですが、免疫のない妊婦さんは妊娠中の感染に注意が必要です。妊娠中にサイトメガロウイルスに感染すると、胎盤を通じて赤ちゃんにも感染する可能性があるためです。
先天性難聴など胎児に大きな影響を及ぼすことも
サイトメガロウイルスが胎盤を通して赤ちゃんに感染する頻度は0.4-1%といわれ、そのうち10-15%は生まれた時からなんらかの症状があったり、生まれた時には症状がなくても、知的障害・運動障害・聴力障害がなどが後でわかることもあります。実は、先天性難聴の原因として、サイトメガロウイルス感染は遺伝的要因についで2番目に多いと言われています。
サイトメガロウイルス感染の日本での確立された治療方法はないため、妊娠中の感染予防がとても大事です。
日常生活で感染予防のために気をつけることを覚えておきましょう
小さいお子さんはサイトメガロウイルスを保有している可能性が高いため、上にお子さんがいる方や保育園などの幼児施設で勤務される方は特に気を付けましょう。
以下の工夫を心がけてみてください。
●以下の行為の後には、頻回に石けんと水で 15 ~ 20 秒間は手洗いをしましょう。
– おむつ交換
– 子どもへの給仕
– 子どものハナやヨダレを拭く
– 子どものおもちゃを触る
●子どもと食べ物・飲み物・食器を共有しない。
●おしゃぶりを口にしない。
●歯ブラシを共有しない。
●子どもとキスをするときは、唾液接触を避ける。
●玩具、カウンターや唾液・尿と触れそうな場所を清潔に保つ。
このように、上のお子さんの子育てが忙しいとついやってしまいそうなことばかりですが、意識的に取り組むことで感染のリスクを減らすことができます。次の赤ちゃんのためにも、まずは正しい知識を身につけておきましょう。
*参考文献
・Seroprevalence of cytomegalovirus IgG antibodies among pregnant women in Japan from 2009-2014. Am J Infect Control. 2015 Nov;43(11):1218-21.
・CDC.CMV in Newborns.
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師にご相談ください。
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(産婦人科医 尾市 有里)