不妊治療中のメンタルケアで大切なこと

最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン

不妊治療、妊活、その言葉を聞くだけで気が滅入ってしまうことはありませんか?妊娠したいのにできない、という現実を受け入れること自体、とてもストレスが強いものです。不妊治療中のメンタルケアについてご紹介します。

妊活中に抑うつや気分の落ち込みを感じる方は多い

妊活が辛い、というのは変なことでも何でもありません。多くの方は不妊治療中に精神的苦痛を感じます。

不妊治療を受けたからといってすぐに妊娠できる人は多くありません。不妊治療を受けた3人に1人は、残念ながら妊娠できずに治療を終えている現実があります。診断と治療の時間が長く、終わりのない妊活に絶望感を感じることがあります。

不妊治療をしたという事実が自己肯定感を下げ、妊娠した後も不安やストレスが続き、赤ちゃんが健康なのか不安を感じることもあります。

そのため、不妊治療を受ける全ての方に、メンタルケアを意識していただきたいのです。最初は、カウンセリングなんて面倒!と思われるかもしれませんが、治療を進めるほど、さまざまな問題が浮かび上がります。困った時にSOSを出す練習と思って、ぜひ治療の前からカウンセリングを積極的に利用しましょう。

不妊治療中に感じるさまざまなストレス

不妊治療中には以下のようなストレスを感じることがあります。

  • 保険診療になっても経済的な負担が大きい
  • 通院のたびに職場にお休みをもらわないといけない
  • 親戚の集まりや実家の帰省時に妊娠や子供について質問される
  • 友達や知り合いの妊娠報告にモヤモヤしてしまう

これらは不妊治療を受けるカップルにおいて、男性にも女性にも共通した悩みです。これらに対して直接の解決策は無いことが多いのですが、まずはお二人で「不妊治療をいつまでおこなうか」について話し合いましょう。カップルで情報を共有して共通のゴールを作ることが一つの方法になります。

そして、治療方針は医師と治療を受けるカップル2人の意見を合わせて決定しましょう。妊活も、その後の子育ても、両親が理解し合い、揃って取り組むことでお互いのストレスは軽減されます。

しかし、夫婦でどんなに話をしても、妊活への気持ちの不一致が起こることも、少なくありません。

そんな時には誰かに聞いてみること、客観的なメタ認知が有効です。第三者の意見を聞いてみると、物事の捉え方が変わるきっかけになる場合があります。全国の自治体には「不妊専門相談センター」が設置されていますので、ぜひ活用してみてください。

厚生労働省. 不妊専門相談報告書, 第2章 不妊専門相談センターの実施実態.

男性と女性では感じるストレスが少し違います

カップルや夫婦がすれ違ってしまう原因として、男性と女性では不妊治療中に感じるストレスが少し違うことがあげられます。お互いが相手のストレスについて知っておくと、配慮がしやすくなります。

女性目線で考えると

  • パートナーに精液の準備をしてもらうストレス
  • ホルモン剤のせいで身体がむくんだり、イライラしたり、体調不良の波が大きい
  • お酒もタバコもカフェインも控える必要がある
  • 体重管理が必要と言われて毎日食事に気を使う
  • 排卵日に神経質になってSEXが楽しくない
  • 自分で女性ホルモンの注射を打つ必要がある(痛み・負担・恐怖)
  • 妊娠判定の日のストレスが大きい。妊娠しないと自分が否定されたように感じる

男性目線で考えると

  • 治療が複雑でよくわからない
  • パートナーが1人で受診している(治療の疎外感)
  • 妊活で勧められるサプリの効果が分からない
  • お酒、タバコ、カフェインを控える必要がある
  • パートナーに月経が来るたびに、自分が生物学的に否定される気がして、自信がなくなる
  • 排卵日にストレスでSEXできない、勃起できない、射精できない

治療内容によるものもありますが、女性は不妊治療中に、男性よりも高い確率で、うつ、不安、ストレスを抱え、自尊心が低くなってしまう傾向が報告されています。

男性のストレスには治療内容をよく知ることで解消されるものも含まれています。

妊活は自分たちのペースで焦らずに。不妊治療には心のケアが大切です。男性にも女性にも妊活による心身のストレスは忍び寄ってきます。ストレスが辛くて、不妊治療を辞めた途端に自然妊娠した!という声も経験します。

眠れない、涙もろい、楽しいや嬉しいを感じない。そんなことはありませんか?

辛い気持ちは1人で抱え込まず、まずは周りに相談しましょう。カウンセリングを利用することがお勧めです。

相談相手が見つからない場合には私たちがお聞きします。

*参考文献

日本生殖心理学会. 「ESHRE サイコソーシャルケアガイドライン 日本語版」. 2020.

「不育症管理に関する提言」改訂委員会. 「不育症相談対応マニュアル」. 令和2年度厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業(健やか次世代育成総合研究事業分野)). 2021. 

さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ産婦人科オンラインの医師・助産師にご相談ください。

産婦人科オンラインはこれからも妊娠中・産後の不安や疑問を解決するために情報を発信していきます。

(産婦人科医 富樫 嘉津恵

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