最終更新日: 2024年2月15日 by 産婦人科オンライン
授乳(母乳栄養)中に突然ネガティブな気持ちや不快な気分、ゾワゾワした感覚、吐き気が現れる方がいます。こうした現象は不快性射乳反射(D-MER)と呼ばれます。
授乳中に嫌な気分になるのは、ホルモンのせいかもしれません
不快性射乳反射(Dysphoric milk ejection reflex: D-MER)というものがあります。
授乳(母乳栄養)中、特に母乳排出の数秒前に起こる、突然のネガティブな気持ちや不快な気分、ゾワゾワした感覚、吐き気が現れてしまうものを指します。稀ではありますが、授乳中の女性の一部に起こります。
原因として、主にホルモンの影響と考えられており、特にドーパミンという成分の低下により起こると考えられています。産後うつ病とは別物です。
D-MERの特徴は?
授乳時にネガティブな気持ちや不快感などを感じる場合、症状の重さには個人差があります。少しため息が出てしまうくらい(軽め)の人から、非常に辛い気分になって授乳を辞めたくなってしまう(重め)人もいます。
D-MERの症状は、産後3ヵ月までに軽くなっていく/なくなっていくという研究報告がありますが、授乳期間中ずっと続くこともあります。
ただし、症状の持続期間にかかわらず、赤ちゃんが大きくなるにつれてうまく対処できるようになっていくことが多いとされています。
生活習慣の工夫で楽になることがあります
それでは、D-MERへの対処法はどのようなものがあるのでしょうか。
症状が軽度〜中等度の場合、生活習慣を変えることが有効でしょう。まずはD-MERがどのような状態(現象)であるかを知ることが大切です。決して「自分は母親に向いていないんだ」と思う必要はありません。
また、気を紛らわせること(授乳中の食事や好きな音楽を聴くなど)で症状を感じにくくなったり、症状を悪化させる要因(例:心身のストレス、水分不足、カフェインなど)を避けることも試してみましょう。
症状が重度(授乳が全然できない、毎日が辛くてしょうがない、など)の場合、医療機関(産婦人科など)で医師や助産師に相談することが大切です。一緒に対処法を考えてくれるでしょう。
一定頻度で授乳を生理的に辛いと感じてしまう人がいますが、決して「自分は母親に向いていないんだ」と思う必要はありません。まずは、D-MERという現象があることを知って、対処法を試してみましょう。
*参考文献
・The Australian Breastfeeding Association
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(産婦人科医 重見大介)